一部の人だけに限定されている場合は給与課税されますが、役員や従業員全員を対象とする一般的なご本人分の健康診断料等の費用は、次の理由から給与課税を行わなくてよいことになっています。
① 労働安全衛生法で労働者を雇用する使用者は、労働者に対する健康診断の義務が定められていること。
② 年一回程度の一般的な健康診断は、従業員の健康管理を行うために、一般的に実施されているものであること。
ただし、配偶者の健康診断の費用を会社が負担することは、いくら福利厚生の向上とは言え、次の理由から現物給与として、給与課税を行うべきものです。
① 法的には、会社側に健康診断による従業員の配偶者の健康管理義務がないこと。
② 使用者が、配偶者の健康診断料を負担する事は一般的ではないこと。
参考までに給与以外で支給されるもので福利厚生費としてしょりされるものを挙げておきます。
1.慶弔見舞金
・結婚祝、出産祝
・見舞金、香典などの慶弔金
・お祝いの品、花輪の費用
上記は全額経費として処理可能ですが、支給を受ける役員や従業員の地位などにより世間一般とかけ離れた金額でなければ、給与課税されません。
2.通勤費
所得税法上で通勤手当は一定金額までは非課税となります。
3.忘年会、新年会、歓送迎会など社内レクリエーション費用
いくつか要件がありますのでご注意を。
・対象が全社員(ただし、開催日にやむを得ない理由があって参加できない場合は除く)
・一部の社員だけの対象としないこと
・金額があまり高額とならないこと
4.社員旅行
社員旅行の要件を挙げておきます。
・旅行期間が4泊5日以内
・旅行の参加者が全体の50%以上
・旅行の参加者を限定していないこと
・自己都合で参加できなかった人に現金を支給しないこと(給与課税されます)
5.社宅
・従業員に賃貸する場合
従業員に対して社宅や寮などを賃貸場合、従業員から1か月当たり一定額の家賃(以下「賃貸料相当額」といいます。)以上を受け取っていれば給与として課税されません。
賃貸料相当額とは、次の(1)~(3)の合計額です。
(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
従業員に無償で賃貸する場合には、この賃貸料相当額が給与として課税されます。
従業員から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合には、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額が、給与として課税されます。
しかし、従業員から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50%以上であれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されません。
・役員に賃貸する場合
役員に対して社宅を賃貸する場合、役員から1か月当たり一定額の家賃(以下「賃貸料相当額」といいます。)を受け取っていれば、給与として課税されません。
賃貸料相当額は、賃貸する社宅の床面積により小規模な住宅とそれ以外の住宅とに分けられます。ただし、この社宅が、一般的に賃貸されている社宅と言えない、いわゆる豪華社宅である場合は、通常支払うべき家賃が賃貸料相当額になるので注意が必要です。
「役員に賃貸する社宅が小規模な住宅である場合」
次の(1)から(3)の合計額が賃貸料相当額となります。
(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
「役員に貸与する社宅が小規模な住宅でない場合」
(1) 自社所有の社宅の場合
次のイとロの合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。
イ (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%
ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12%ではなく、10%を乗じます。
ロ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%
(2) 他から借り受けた住宅等を貸与する場合
会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記(1)で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額が賃貸料相当額になります。
6.保養所
保養所の購入したり、リゾートクラブの会員権などは、あまりにも高額でなく、会社役員だけを対象としていないなど要件を満たせば福利厚生費として計上することが可能です。
保養所の運営費と、利用者の実際の負担金額との差が多額である場合は、その差額が給与とみなされます。また、実際の利用者が、役員のみであった場合にも給与とされます。
7.食事代の補助(残業に伴う食事代など)
役員や従業員に支給する食事は、次の二つの要件をどちらも満たしていれば、福利厚生費として計上できます。
「食事代の補助の要件」
・役員や従業員が、食事の金額の半分以上を負担していること。ただし、残業や宿日直の場合の支給は除きます。
・食事の金額から役員や従業員が負担している金額を差し引いた金額が1か月当たり3,500円(税抜き)以下であること。
8.会社の常備薬
常備薬を会社で購入した場合は、福利厚生費として処理可能です。
ただし、福利厚生費の基本である、全社員に公平であることが前提ですので、風邪薬や頭痛薬、マスクなどは認められますが、一部の従業員しか利用できなかったり、特定の従業員しか利用できない薬については認められません。
9.社内同好会への補助
社内の親睦等を目的として組織されている同好会、サークル活動などに対して、会社から一定金額を支給する場合は、条件を満たしていれば福利厚生費と処理できます。
「社内同好会・サークルなどの要件」
・役員のみでなく、参加したい従業員であれば誰でも参加できる状態であること
・参加しない人に対して、別途現金が支給されるようなことがないこと
・支給される額は、社会通念上妥当な額であること
10.制服を着用させるための制服費用
会社が制服を支給する場合、制服費用は条件を満たせば福利厚生費として処理することができます。
「制服費用の要件」
・会社内での着用が想定され、通勤や社外で着用しないもの
・社名や会社のロゴマークが入っているもの
・制服として、明らかに従業員であることがわかるようなもの
よく、サラリーマンのスーツは経費になりますかと質問されますが、スーツは一般生活でも利用可能なので、経費としては認められません。
11.外部の福利厚生サービスの利用費
中小企業である場合、独自に福利厚生制度を導入するのが難しいケースが多く、外部の福利厚生サービスを利用することもあるでしょう。
この外部の福利厚生サービスの利用費は、福利厚生費として処理できます。
福利厚生費として処理するためには、役員など一部の人だけが加入するのではなく、従業員も含めた社員全員を加入対象とする必要があります。
12.育児・介護関連
育児・介護関連費用は、福利厚生費として処理することができます。
育児費用とは、保育園料の補助や、ファミリーサポートを利用した時の補助などが該当します。
介護費用とは、介護保険対象サービスを利用した時の補助などです。
どちらも、全社員がいつでも利用できるよう、社内規定に記載しておくことが要件となります。