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機械や備品の移設費用は資本的支出(資産計上)それとも修繕費?

東京などの大都市では人口の集中化などにより、少し前までは工業用地として最適だった場所も他地区造成などで騒音や悪臭の苦情が増えたりして、工場の移転を余儀なくされるケースも増えています。

一言に工場移転といっても、場所を見つけることも大変ですし、膨大な費用もかかります。

そこで、今回は工場移転などでの機械の移設費用についてどういう風に取り扱えばよいか解説します。

機械の移設費用は基本的に修繕費

工場移転を移転する場合、機械などの移設が余儀なくされます。

移設には運賃や据付費が必要です。その費用によって機械などの価値が高まり、耐用年数が延びるようなことがなければ、修繕費として移設して稼働するようになった事業年度の損金として処理することができます。

法人税法基本通達7-8-2(修繕費に含まれる費用)

法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額が修繕費となるのであるが、次に掲げるような金額は、修繕費に該当する。(昭55年直法2-8「二十六」、平7年課法2-7「五」により改正)

(1) 建物の移えい又は解体移築をした場合(移えい又は解体移築を予定して取得した建物についてした場合を除く。)におけるその移えい又は移築に要した費用の額。ただし、解体移築にあっては、旧資材の70%以上がその性質上再使用できる場合であって、当該旧資材をそのまま利用して従前の建物と同一の規模及び構造の建物を再建築するものに限る。

(2) 機械装置の移設(7-3-12《集中生産を行う等のための機械装置の移設費》の本文の適用のある移設を除く。)に要した費用(解体費を含む。)の額

(3) 地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用の額。ただし、次に掲げる場合のその地盛りに要した費用の額を除く。

イ 土地の取得後直ちに地盛りを行った場合

ロ 土地の利用目的の変更その他土地の効用を著しく増加するための地盛りを行った場合

ハ 地盤沈下により評価損を計上した土地について地盛りを行った場合

(4) 建物、機械装置等が地盤沈下により海水等の浸害を受けることとなったために行う床上げ、地上げ又は移設に要した費用の額。ただし、その床上工事等が従来の床面の構造、材質等を改良するものである等明らかに改良工事であると認められる場合のその改良部分に対応する金額を除く。

(5) 現に使用している土地の水はけを良くする等のために行う砂利、砕石等の敷設に要した費用の額及び砂利道又は砂利路面に砂利、砕石等を補充するために要した費用の額

一方で、従来の生産体制の見直しなどで集中生産あるいは流通などを考慮したよりよい立地条件で生産を行うという目的で工場を移転する場合があります。

そういったケースでは合、ガスタンク、鍛圧プレスなど多額の据付費用が必要な機械装置を他の事業所に移設した場合は、移設した記載装置の取得価額に算入することになっています。

法人税法基本通達7-3-12(集中生産を行う等のための機械装置の移設費)

集中生産又はよりよい立地条件において生産を行う等のため一の事業場の機械装置を他の事業場に移設した場合又はガスタンク、鍛圧プレス等多額の据付費を要する機械装置を移設した場合(措置法第65条の2《収用換地等の場合の所得の特別控除》に規定する収用換地等に伴い移設した場合を除く。)には、運賃、据付費等その移設に要した費用(解体費を除く。以下7-3-12において「移設費」という。)の額はその機械装置(当該機械装置に係る資本的支出を含む。以下7-3-12において同じ。)の取得価額に算入し、当該機械装置の移設直前の帳簿価額のうちに含まれている据付費(以下7-3-12において「旧据付費」という。)に相当する金額は、損金の額に算入する。この場合において、その移設費の額の合計額が当該機械装置の移設直前の帳簿価額の10%に相当する金額以下であるときは、旧据付費に相当する金額を損金の額に算入しないで、当該移設費の額をその移設をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。(昭55年直法2-8「二十一」、平19年課法2-7「四」により改正)

(注) 主として新規の生産設備の導入に伴って行う既存の生産設備の配置換えのためにする移設は、原則として集中生産又はよりよい立地条件において生産を行う等のための移設には当たらない。

将来の生産性の向上とを目的として移設であり、その収益と費用を対応させるという意味で新しく発生する据付費などを資本的支出として取得価額に含めるというのがその理由です。

ただし、移設前の旧据付費に相当する金額は損金に算入できます。

それから、同じ集中生産などの移設であっても、収容換地などに伴う機械装置の移設、新規生産設備の導入に伴う既存設備の配置換えによる移設は、一般的は移設として修繕費で処理できます。

また、集中生産のための機械の移設であっても、移設費用が移設直前の帳簿価額の10%以下である場合は、旧据付費に相当する金額を損金とせずに、集中生産のための移設費用を移設した日の属する事業年度の損金とすることが認められています。

なお、機械装置の移設に伴って発生する解体費は、通常の移設費、集中生産の移設費ともに解体した事業年度の損金にすることができます。上記の取り扱いは機械装置に限らず、例えばエアコン、サーバーなどの備品の移設費用で、資産の価値を高めるような費用が発生していなければ修繕費として処理が可能です。

法人税法の取り扱いについて、注意したい点について一覧にまとめていますので、もしよろしかったらご覧ください。

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