使用人から役員に昇格した時に問題となるのが使用人であった期間に対する退職金の処理です。資金がなく何年も経った後に支給したとしたら使用人分としてのものなのか役員としてのものなのかはっきりしないため、トラブルの原因にもなりかねません。
使用人から役員の昇格は、実質的に使用人としての地位を退職するものです。したがって、役員昇格時に退職金規定にもとづいて使用人として従事した期間に対する退職金を支給していれば、問題なく損金処理が認められます。
法人税法基本通達9-2-27
(使用人が役員となった直後に支給される賞与等)
使用人であった者が役員となった場合又は使用人兼務役員であった者が令第71条第1項各号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる役員となった場合において、その直後にその者に対して支給した賞与の額のうちその使用人又は使用人兼務役員であった期間に係る賞与の額として相当であると認められる部分の金額は、使用人又は使用人兼務役員に対して支給した賞与の額として認める。
一口に役員と言っても、通常は使用人兼務役員となって、それから常務取締役などの専任役員になるのが一般的です。そこで気になる点と言えば、単なる使用人であった期間の退職金を専任役員に昇格するまで持ち越した場合です。使用人の期間と使用人兼務役員の期間を通算した上で、使用人部分の退職金規定にもとづいた退職金の金額になっていれば問題ありません。もちろん、過去に使用人であった期間の退職金を受け取っていた場合には、その期間は通算できませんので、お間違いなく。