固定資産には有形固定資産と無形固定資産があります。
無形固定資産とは、有体物ではない資産のうち、法律上の権利などで、長期間事業のために使用されるものをいいます。
ところで、無形固定資産というのは、具体的にどういったものがあるのでしょうか?
無形固定資産の代表的なものは営業権やソフトウェア
無形固定資産は、法人税法施行令に列挙されています。
法人税法施行令第13条第1項第8号
イ 鉱業権(租鉱権及び採石権その他土石を採掘し又は採取する権利を含む。)
ロ 漁業権(入漁権を含む。)
ハ ダム使用権
ニ 水利権
ホ 特許権
ヘ 実用新案権
ト 意匠権
チ 商標権
リ ソフトウエア
ヌ 育成者権
ル 公共施設等運営権
ヲ 営業権
ワ 専用側線利用権(鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)第二条第一項(定義)に規定する鉄道事業又は軌道法(大正十年法律第七十六号)第一条第一項(軌道法の適用対象)に規定する軌道を敷設して行う運輸事業を営む者(以下この号において「鉄道事業者等」という。)に対して鉄道又は軌道の敷設に要する費用を負担し、その鉄道又は軌道を専用する権利をいう。)
カ 鉄道軌道連絡通行施設利用権(鉄道事業者等が、他の鉄道事業者等、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構又は国若しくは地方公共団体に対して当該他の鉄道事業者等、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構若しくは独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構の鉄道若しくは軌道との連絡に必要な橋、地下道その他の施設又は鉄道若しくは軌道の敷設に必要な施設を設けるために要する費用を負担し、これらの施設を利用する権利をいう。)
ヨ 電気ガス供給施設利用権(電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第八号(定義)に規定する一般送配電事業、同項第十号に規定する送電事業若しくは同項第十四号に規定する発電事業又はガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)第二条第五項(定義)に規定する一般ガス導管事業を営む者に対して電気又はガスの供給施設(同条第七項に規定する特定ガス導管事業の用に供するものを除く。)を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して電気又はガスの供給を受ける権利をいう。)
タ 水道施設利用権(水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第三条第五項(定義)に規定する水道事業者に対して水道施設を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して水の供給を受ける権利をいう。)
レ 工業用水道施設利用権(工業用水道事業法(昭和三十三年法律第八十四号)第二条第五項(定義)に規定する工業用水道事業者に対して工業用水道施設を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して工業用水の供給を受ける権利をいう。)
ソ 電気通信施設利用権(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第九条第一号(電気通信事業の登録)に規定する電気通信回線設備を設置する同法第二条第五号(定義)に規定する電気通信事業者に対して同条第四号に規定する電気通信事業の用に供する同条第二号に規定する電気通信設備の設置に要する費用を負担し、その設備を利用して同条第三号に規定する電気通信役務の提供を受ける権利(電話加入権及びこれに準ずる権利を除く。)をいう。)
九 次に掲げる生物(第七号に掲げるものに該当するものを除く。)
イ 牛、馬、豚、綿羊及びやぎ
ロ かんきつ樹、りんご樹、ぶどう樹、梨樹、桃樹、桜桃樹、びわ樹、くり樹、梅樹、柿樹、あんず樹、すもも樹、いちじく樹、キウイフルーツ樹、ブルーベリー樹及びパイナップル
ハ 茶樹、オリーブ樹、つばき樹、桑樹、こりやなぎ、みつまた、こうぞ、もう宗竹、アスパラガス、ラミー、まおらん及びホップ
引用元:法人税法施行令
これらのうち、借地権と電話加入権などは減価償却が認められていません。
また、無形固定資産として列挙はされていませんが、ゴルフクラブ入会金やレジャークラブ入会金も税務上は資産に計上されることが要求されていて、しかも原則として償却できません。
法人税法基本通達9-7-11
(ゴルフクラブの入会金)
法人がゴルフクラブに対して支出した入会金については、次に掲げる場合に応じ、次による。(昭49年直法2-71「15」、昭55年直法2-15「十六」により改正)
(1) 法人会員として入会する場合 入会金は資産として計上するものとする。ただし、記名式の法人会員で名義人たる特定の役員又は使用人が専ら法人の業務に関係なく利用するためこれらの者が負担すべきものであると認められるときは、当該入会金に相当する金額は、これらの者に対する給与とする。
(2) 個人会員として入会する場合 入会金は個人会員たる特定の役員又は使用人に対する給与とする。ただし、無記名式の法人会員制度がないため個人会員として入会し、その入会金を法人が資産に計上した場合において、その入会が法人の業務の遂行上必要であるため法人の負担すべきものであると認められるときは、その経理を認める。
(注) この入会金は、ゴルフクラブに入会するために支出する費用であるから、他人の有する会員権を購入した場合には、その購入代価のほか他人の名義を変更するためにゴルフクラブに支出する費用も含まれる。
法人税法基本通達9-7-13の2
(レジャークラブの入会金)
9-7-11及び9-7-12の取扱いは、法人がレジャークラブ(宿泊施設、体育施設、遊技施設その他のレジャー施設を会員に利用させることを目的とするクラブでゴルフクラブ以外のものをいう。以下9-7-14において同じ。)に対して支出した入会金について準用する。ただし、その会員としての有効期間が定められており、かつ、その脱退に際して入会金相当額の返還を受けることができないものとされているレジャークラブに対して支出する入会金(役員又は使用人に対する給与とされるものを除く。)については、繰延資産として償却することができるものとする。(昭52年直法2-33「14」により追加)
(注) 年会費その他の費用は、その使途に応じて交際費等又は福利厚生費若しくは給与となることに留意する。
無形固定資産の取得価額は、他の減価償却資産と同じように付随費用が加算されますが、登録免許税やその他の登録費用は取得価額に含めなくても良いことになっています。
法人税法基本通達7-3-3の2
(固定資産の取得価額に算入しないことができる費用の例示)
次に掲げるような費用の額は、たとえ固定資産の取得に関連して支出するものであっても、これを固定資産の取得価額に算入しないことができる。(昭50年直法2-21「19」により追加、昭55年直法2-8「二十一」、平23年課法2-17「十四」により改正)
引用元:国税庁ホームページ
(1) 次に掲げるような租税公課等の額
イ 不動産取得税又は自動車取得税
ロ 特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるもの
ハ 新増設に係る事業所税
ニ 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用
(2) 建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用の額
(3) 一旦締結した固定資産の取得に関する契約を解除して他の固定資産を取得することとした場合に支出する違約金の額
無形固定資産の耐用年数については、鉱業権を除いて「減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第三 無形減価償却資産の耐用年数表」に定められていて、定額法により償却し、残存価額はゼロです。
鉱業権はもっぱら生産高比例法を用いて償却計算されます。
減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第三 無形減価償却資産の耐用年数表
種類 | 細目 | 耐用年数 |
漁業権 | 10年 | |
ダム使用権 | 55年 | |
水利権 | 20年 | |
特許権 | 8年 | |
実用新案権 | 5年 | |
意匠権 | 7年 | |
商標権 | 10年 | |
ソフトウエア | 複写して販売するための原本 | 3年 |
その他のもの | 5年 | |
育成者権 | 種苗法(平成十年法律第八十三号)第四条第二項に規定する品種 | 10年 |
その他 | 8年 | |
営業権 | 5年 | |
専用側線利用権 | 30年 | |
鉄道軌道連絡通行施設利用権 | 30年 | |
電気ガス供給施設利用権 | 15年 | |
水道施設利用権 | 15年 | |
工業用水道施設利用権 | 15年 | |
電気通信施設利用権 | 20年 |