税務会計のミチシルベ

特別加入の労災保険料は社会保険料控除の対象

労働者災害補償保険は、通常、事業で雇用されている労働者の労働災害を目的としている制度です。

ただし、労働者を雇用せず、土木や建築など工作物の建設などの事業を行う「一人親方等」は特別加入制度があり、労災保険に加入することができることになっています。

さて、特別加入することで支払う労災保険料は事業の経費として認められるのでしょうか?

特別加入の労災保険料は経費でなく社会保険料

所得税法において社会保険料控除とは、居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき「社会保険料」を支払った場合や給与や公的年金から控除された場合に、その実際に支払った金額あるいは控除された金額を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する制度。

その社会保険料に該当するものには、健康保険料・国民健康保険料(国民健康保険税)・後期高齢者医療保険料・介護保険料・国民年金保険料・厚生年金保険料などが挙げられます。

所得税法第74条

(社会保険料控除)

居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払つた場合又は給与から控除される場合には、その支払つた金額又はその控除される金額を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。

2 前項に規定する社会保険料とは、次に掲げるものその他これらに準ずるもので政令で定めるもの(第九条第一項第七号(在勤手当の非課税)に掲げる給与に係るものを除く。)をいう。

一 健康保険法(大正十一年法律第七十号)の規定により被保険者として負担する健康保険の保険料
二 国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)の規定による国民健康保険の保険料又は地方税法の規定による国民健康保険税
二の二 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)の規定による保険料
三 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)の規定による介護保険の保険料
四 労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四十四年法律第八十四号)の規定により雇用保険の被保険者として負担する労働保険料
五 国民年金法の規定により被保険者として負担する国民年金の保険料及び国民年金基金の加入員として負担する掛金
六 独立行政法人農業者年金基金法の規定により被保険者として負担する農業者年金の保険料
七 厚生年金保険法の規定により被保険者として負担する厚生年金保険の保険料
八 船員保険法の規定により被保険者として負担する船員保険の保険料
九 国家公務員共済組合法の規定による掛金
十 地方公務員等共済組合法の規定による掛金(特別掛金を含む。)
十一 私立学校教職員共済法の規定により加入者として負担する掛金
十二 恩給法第五十九条(恩給納金)(他の法律において準用する場合を含む。)の規定による納金

3 第一項の規定による控除は、社会保険料控除という。

引用元:所得税法

所得税法では労災保険料が社会保険料控除の対象になるとの規定はありませんが、所得税法施行令にて規定されています。

所得税法施行令第208条

(社会保険料の範囲)

法第七十四条第二項(社会保険料の意義)に規定する政令で定めるものは、次に掲げるものとする。

一 労働者災害補償保険法第四章の二(特別加入)の規定により労働者災害補償保険の保険給付を受けることができることとされた者に係る労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四十四年法律第八十四号)の規定による保険料
二 地方公共団体の職員が条例の規定により組織する団体(以下この号において「互助会」という。)の行う職員の相互扶助に関する制度で次に掲げる要件を備えているものとして財務省令で定めるところにより税務署長の承認を受けているものに基づき、その職員が負担する掛金
イ 当該互助会の事業が、地方公務員等共済組合法第五十三条第一項第二号から第十三号まで(短期給付の種類等)に掲げる給付(当該給付に係る同法第六十一条(療養に関する退職又は死亡後の給付)の規定による給付を含む。)に類する給付のみを行うものであること。
ロ イに規定する給付に要する費用は、主として当該職員が負担する掛金及び当該地方公共団体の補助金によつて充てられるものであること。
ハ 当該互助会への加入資格のある者の全員が加入しているものであること。
三 国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律(昭和三十六年法律第百五十二号)附則第九条から第十一条まで(公庫等の復帰希望職員に関する経過措置)の規定による掛金
四 平成二十五年厚生年金等改正法附則第五条第一項(存続厚生年金基金に係る改正前厚生年金保険法等の効力等)の規定によりなおその効力を有するものとされる旧厚生年金保険法(以下この号において「旧効力厚生年金保険法」という。)第百三十八条から第百四十一条まで(費用の負担)の規定により平成二十五年厚生年金等改正法附則第三条第十一号(定義)に規定する存続厚生年金基金の加入員として負担する掛金(旧効力厚生年金保険法第百四十条第四項(徴収金)の規定により負担する徴収金を含む。)

引用元:所得税法施行令

したがって、個人事業主が所得税の確定申告書を作成する場合には、支払った労災保険料を社会保険料控除として所得から控除することとなります。

「労災保険は会社員などの雇用者だけが加入できる保険」という固定概念を持っていると、間違って特別加入の労災保険料を事業所得の必要経費に算入してしまう可能性がありますので気を付けましょう。

実際、労災保険料を事業経費として間違って処理したとしても所得税や住民税の金額には影響ありあませんが、所得で計算する国民健康保険や個人事業税などが少なくなってしまいますので、やはり、正しい申告をするようにしたいものですね。

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