税務会計のミチシルベ

法人設立時の税務署への届出書類

法人設立時に税務署へ提出する届出書類として忘れてならないのが「青色申告の承認申請書」です。

その他に忘れてはならないものが何点かあります。

代表的なものに「法人設立届出書」ですが、法人設立時の届出書類についてまとめてみました。

法人設立届出書の提出期限は設立の日から2ヵ月以内

法人税法には下記の定めがあります。つまり、法人を設立してから2ヵ月以内に納税地や法人設立の日を記載した届出書を提出しなければなりません。

法人税法 第148条

(内国普通法人等の設立の届出)

新たに設立された内国法人である普通法人又は協同組合等は、その設立の日以後二月以内に、次に掲げる事項を記載した届出書にその設立の時における貸借対照表その他の財務省令で定める書類を添付し、これを納税地(連結子法人にあつては、その本店又は主たる事務所の所在地。第一号において同じ。)の所轄税務署長に提出しなければならない。
一 その納税地
二 その事業の目的
三 その設立の日

法人税法第148条に記載されている「その他の財務省令定める書類」は法人税法施行規則に定めがあります。

法人税法施行規則 第63条

(設立届出書の添付書類)

法第百四十八条第一項(内国普通法人等の設立の届出)に規定する財務省令で定める書類は、次の各号に掲げるもの(当該各号に掲げるものが電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下第六十五条までにおいて同じ。)で作成され、又は当該各号に掲げるものの作成に代えて当該各号に掲げるものに記載すべき情報を記録した電磁的記録の作成がされている場合には、これらの電磁的記録に記録された情報の内容を記載した書類)とする。
一 法第百四十八条第一項に規定するその設立の時における貸借対照表
二 定款、寄附行為、規則若しくは規約又はこれらに準ずるものの写し
三 株主等の名簿の写し
四 法第百四十八条第一項に規定する内国法人である普通法人又は協同組合等が合併、分割又は現物出資(以下この号において「合併等」という。)により設立されたものであるときは、当該合併等に係る被合併法人、分割法人又は出資者の名称又は氏名及び納税地(その納税地とその本店又は主たる事務所の所在地とが異なる場合には、その納税地及び本店又は主たる事務所の所在地)を記載した書類
五 法第百四十八条第一項に規定する内国法人である普通法人が連結子法人である場合には、連結親法人の名称及びその納税地を記載した書類
六 設立趣意書

第1号の貸借対照表については、現物出資によりいくつかの資産がある場合は必要でしょうが、現金出資による場合は現金と資本金しかありませんので特に提出は求められません。

第2、3、4、5号は記載通りです。

多くの場合、設立趣意書は作成していないので、その場合には添付する必要はありません。

あと、設立の事実を証明するため法務局が発行する「登記事項証明書」の添付を求められます。

必要に応じて源泉所得税関係の届出などが必要

設立時の状況や必要に応じて、下記のような届出書が必要になります。

1.給与支払事務所等の開設届出書

2.消費税の新設法人に該当する旨の届出書

3.青色申告の承認申請書

4.棚卸資産の評価方法の届出書

5.減価償却資産の償却方法の届出書

1に関しては所得税法に下記のような記載があります。

所得税法 第229条

(開業等の届出)

居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日から一月以内に、税務署長に提出しなければならない。

(給与等の支払をする事務所の開設等の届出)

国内において給与等の支払事務を取り扱う事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、又はこれらを移転し若しくは廃止した者は、その事実につき前条の届出書を提出すべき場合を除き、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日から一月以内に、税務署長に提出しなければならない。

所得税法第229条および第230条の「財務省令で定めるところ」については所得税法施行規則にその定めがあります。

所得税法施行規則 第98条

(開業等の届出)

居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業(以下この条において「事業所得等を生ずべき事業」という。)を開始し、又はその事業所得等を生ずべき事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるもの(以下この条において「事務所等」という。)を設け、若しくはその事務所等を移転し、若しくは廃止した場合には、法第二百二十九条(開業等の届出)の規定により、次に掲げる事項を記載した届出書を、納税地の所轄税務署長(事務所等を移転する場合で、その移転前の事務所等の所在地とその移転前の納税地とが同一であり、かつ、その移転後の事務所等の所在地とその移転後の納税地が同一であるときは、その移転前の納税地の所轄税務署長)に提出しなければならない。

一 その届出書を提出する者の氏名、住所(国内に住所がない場合には、居所)及び個人番号(個人番号を有しない者にあつては、氏名及び住所(国内に住所がない場合には、居所))並びに住所地(国内に住所がない場合には、居所地)と納税地とが異なる場合には、その納税地

二 国内において新たに事業所得等を生ずべき事業を開始し、又はその事業所得等を生ずべき事業に係る事務所等を設け、若しくはその事務所等を移転し、若しくは廃止した旨及びその開始し、又はその事務所等を設け、若しくはその事務所等を移転し、若しくは廃止した年月日

三 国内において新たに事業所得等を生ずべき事業を開始した場合にはその事業所得等を生ずべき事業の概要

四 その事務所等の所在地(事務所等を移転した場合には、その移転前の事務所等の所在地及びその移転後の事務所等の所在地)

五 その他参考となるべき事項

所得税法施行規則 第99条

(給与等の支払をする事務所の開設等の届出)

国内において法第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この条において「給与等」という。)の支払事務を取り扱う事務所、事業所その他これらに準ずるもの(以下この条において「給与支払事務所等」という。)を設け、又はこれを移転し、若しくは廃止した者は、その事実につき前条の届出書を提出すべき場合を除き、法第二百三十条(給与等の支払をする事務所の開設等の届出)の規定により、次に掲げる事項を記載した届出書を、その給与支払事務所等の所在地の所轄税務署長(給与支払事務所等を移転する場合には、その移転前の給与支払事務所等の所在地の所轄税務署長)に提出しなければならない。

一 その届出書を提出する者の氏名又は名称、住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地及び個人番号又は法人番号(個人番号及び法人番号を有しない者にあつては、氏名又は名称及び住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地)

二 給与支払事務所等を設け、又はこれを移転し、若しくは廃止した旨及びその年月日

三 給与支払事務所等の所在地(給与支払事務所等を移転する場合には、その移転前の給与支払事務所等の所在地及びその移転後の給与支払事務所等の所在地)

四 その届出書を提出する日の現況におけるその給与支払事務所等において給与等の支払を受ける者の職種等の別の人員数

五 その他参考となるべき事項

事業者は給与支払い時や報酬の支払い時に源泉所得税を徴収しなければなりません。役員や従業員に給料を支払ったり、弁護士や税理士に報酬を支払う場合も同じく源泉所得税の徴収義務があります。

所得税法 第6条

(源泉徴収義務者)

第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等の支払をする者その他第四編第一章から第六章まで(源泉徴収)に規定する支払をする者は、この法律により、その支払に係る金額につき源泉徴収をする義務がある。

所得税法 第204条

(源泉徴収義務)

居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

一 原稿、さし絵、作曲、レコード吹込み又はデザインの報酬、放送謝金、著作権(著作隣接権を含む。)又は工業所有権の使用料及び講演料並びにこれらに類するもので政令で定める報酬又は料金

二 弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金

三 社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)の規定により支払われる診療報酬

四 職業野球の選手、職業拳けん闘家、競馬の騎手、モデル、外交員、集金人、電力量計の検針人その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金

五 映画、演劇その他政令で定める芸能又はラジオ放送若しくはテレビジョン放送に係る出演若しくは演出(指揮、監督その他政令で定めるものを含む。)又は企画の報酬又は料金その他政令で定める芸能人の役務の提供を内容とする事業に係る当該役務の提供に関する報酬又は料金(これらのうち不特定多数の者から受けるものを除く。)

六 キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設でフロアにおいて客にダンスをさせ又は客に接待をして遊興若しくは飲食をさせるものにおいて客に侍してその接待をすることを業務とするホステスその他の者(以下この条において「ホステス等」という。)のその業務に関する報酬又は料金

七 役務の提供を約することにより一時に取得する契約金で政令で定めるもの

八 広告宣伝のための賞金又は馬主が受ける競馬の賞金で政令で定めるもの

2 前項の規定は、次に掲げるものについては、適用しない。

一 前項に規定する報酬若しくは料金、契約金又は賞金のうち、第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(次号において「給与等」という。)又は第三十条第一項(退職所得)に規定する退職手当等に該当するもの

二 前項第一号から第五号まで並びに第七号及び第八号に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金のうち、第百八十三条第一項(給与所得に係る源泉徴収義務)の規定により給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人から支払われるもの

三 前項第六号に掲げる報酬又は料金のうち、同号に規定する施設の経営者(以下この条において「バー等の経営者」という。)以外の者から支払われるもの(バー等の経営者を通じて支払われるものを除く。)

3 第一項第六号に掲げる報酬又は料金のうちに、客からバー等の経営者を通じてホステス等に支払われるものがある場合には、当該報酬又は料金については、当該バー等の経営者を当該報酬又は料金に係る同項に規定する支払をする者とみなし、当該報酬又は料金をホステス等に交付した時にその支払があつたものとみなして、同項の規定を適用する。

したがって、法人設立して給料や報酬を支払う場合は、支払義務が発生してから1か月以内に届出書を提出する必要があります。

2については設立時の資本金が1,000万円以上であれば、設立当初から消費税の納税義務者となるので提出が必要です。

消費税法 第12条の2

(新設法人の納税義務の免除の特例)

その事業年度の基準期間がない法人(社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二十二条(定義)に規定する社会福祉法人その他の専ら別表第一に掲げる資産の譲渡等を行うことを目的として設立された法人で政令で定めるものを除く。)のうち、当該事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が千万円以上である法人(以下この項及び次項において「新設法人」という。)については、当該新設法人の基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間(第九条第四項の規定による届出書の提出により、又は第九条の二第一項、第十一条第三項若しくは第四項若しくは前条第一項若しくは第二項の規定により消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間を除く。)における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、第九条第一項本文の規定は、適用しない。

資本金が1,000万円未満あるいは一定の条件に該当すれば、最長2年間は消費税の納税義務はありません。

消費税法 第9条 

(小規模事業者に係る納税義務の免除)

事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

3の「青色申告の承認申請書」については、届出をすることによっていくつかの特典を受けることができます。

法人税法 第57条 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し

法人税法 第144条の13 欠損金の繰戻しによる還付

租税特別措置法 第67条の5 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

特別償却と税額控除 租税特別措置法 第10条の3 中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除特別償却と税額控除の適用 など

法人税法 第130条 青色申告書等に係る更正 → 推計課税の制限

4の「棚卸資産の評価方法の届出書」は、届出書を提出しなかった場合は「最終仕入原価法」が適用されるので、最終仕入原価法以外の棚卸資産の評価方法を選択する場合に届出書を提出します。

法人税法施行令 第31条

(棚卸資産の法定評価方法)

法第二十九条第一項(棚卸資産の売上原価等の計算及びその評価の方法)に規定する評価の方法を選定しなかつた場合又は選定した方法により評価しなかつた場合における政令で定める方法は、第二十八条第一項第一号ホ(最終仕入原価法)に掲げる最終仕入原価法により算出した取得価額による原価法とする。

5の「減価償却資産の償却方法の届出書」は、届出書を提出しなかった場合は「定率法」あるいは「生産高比例法」にて減価償却費を計算することになります。

法人税法施行令 第53条

(減価償却資産の法定償却方法)

法第三十一条第一項(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)に規定する償却の方法を選定しなかつた場合における政令で定める方法は、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める方法とする。

一 平成十九年三月三十一日以前に取得をされた減価償却資産 次に掲げる資産の区分に応じそれぞれ次に定める方法

イ 第四十八条第一項第一号イ及び同項第二号(減価償却資産の償却の方法)に掲げる減価償却資産 旧定率法

ロ 第四十八条第一項第三号及び第五号に掲げる減価償却資産 旧生産高比例法

二 平成十九年四月一日以後に取得をされた減価償却資産 次に掲げる資産の区分に応じそれぞれ次に定める方法

イ 第四十八条の二第一項第一号イ及び第二号(減価償却資産の償却の方法)に掲げる減価償却資産 定率法

ロ 第四十八条の二第一項第三号及び第五号に掲げる減価償却資産 生産高比例法

法人設立に際しては、いろいろな税務や労務の知識やが必要になるので、専門家に相談するのが得策です。

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