税務会計のミチシルベ

貸倒引当金戻入は特別利益じゃない!?

勘定科目の中に貸倒引当金というものがあります。

売掛金や受取手形などの売上債権について貸し倒れを見越して計上するものです。

貸し倒れの実績率あるいは法定貸倒率にもとづいて貸倒引当金を計算し、貸倒引当金繰入という科目を使って費用として計上します。

貸倒引当金は実際に貸し倒れが発生したときに売掛金等と相殺されます。

ところで、期末の貸倒引当金を全額戻す場合や期末に計算した貸倒引当金より帳簿価額がおおくて戻入する場合の貸倒引当金戻入は販売費及び一般管理費、営業外収益、それとも特別利益のどこに記載すればよいのでしょうか?

「中小企業の会計に関する指針」では貸倒引当金戻入は特別利益

「中小企業の会計に関する指針」では貸倒引当金戻入は特別利益で処理するように記載されています。

中小企業の会計に関する指針

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18.貸倒引当金 

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(5) 原則的な処理
 貸倒引当金の繰入、戻入(取崩し)は債権の区分ごとに行う。
 当期に対象となった債権を直接償却により債権額と相殺した後、貸倒引当金に期末残高があるときは、これを当期繰入額と相殺する。その際、繰入額の方が多い場合は、その差額を貸倒引当金繰入額として、次のとおり表示する。
① 営業上の取引に基づいて発生した債権に対するもの・・・販売費
② ①、③以外のもの ・・・営業外費用
③ 臨時かつ巨額のもの ・・・特別損失
また、取崩額の方が多い場合は、その取崩差額を特別利益に計上する

「金融商品会計に関する実務指針」では貸倒引当金戻入は営業費用(営業外費用)のマイナスあるいは営業外収益

「金融商品会計に関する実務指針」では貸倒引当金戻入は営業費用(営業外費用)のマイナスあるいは営業外収益で表示するとなっています。

金融商品会計に関する実務指針

貸倒引当金の会計処理
繰入額と取崩額の相殺表示
125.当事業年度末における貸倒引当金のうち直接償却により債権額と相殺した後の不要となった残額があるときは、これを取り崩さなければならない。ただし、当該取崩額はこれを当期繰入額と相殺し、繰入額の方が多い場合にはその差額を繰入額算定の基礎となった対象債権の割合等合理的な按分基準によって営業費用(対象債権が営業上の取引に基づく債権である場合)又は営業外費用(対象債権が営業外の取引に基づく債権である場合)に計上するものとする。また、取崩額の方が大きい場合には、過年度遡及会計基準第55項に従って、原則として営業費用又は営業外費用から控除するか営業外収益として当該期間に認識する。

 

貸倒引当金戻入を営業外収益と特別利益のどちらで処理するべき?

貸倒引当金戻入を営業外収益と特別利益のどちら処理しようと最終の当期純利益は同じになります。

以前は貸倒引当金戻入は前期以前の修正になるので特別利益で処理するという考え方だったようですが、繰入だけ販売費及び一般管理費で行い、戻入を経常利益の算定のくくりである営業外収益に計上しないのはおかしいのでは?という議論があり改正に至ったのではないでしょうか。

まあ、個人的には厳密に処理するのであれば「金融商品会計に関する実務指針」に従うべきだと考えるので「中小企業の会計に関する指針」に則った特別利益での処理は避けようかと思います。

参考:償却債権取立益は営業外収益

参考として記載しますが、償却債権取立益も以前は特別利益だったのに現在では営業外収益となっています。

金融商品会計に関する実務指針

貸倒引当金の会計処理
直接減額後の回収
124.貸倒見積高を債権から直接減額した後に、残存する帳簿価額を上回る回収があった場合には、原則として営業外収益として当該期間に認識する。

会計基準の改正は結構頻繁に行われるので定期的にチェックしておきたいものですね。

 

 

 

 

 

 

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