税務会計のミチシルベ

財務諸表論 理論暗記19 ストック・オプション等に関する会計基準

*[ ? ]にカーソルを移動すると答えが表示されます。

目 的

1. 我が国では、平成 13 年 11 月の商法改正において新株予約権制度が導入されたことを契機として、新株予約権のストック・オプションとしての利用が活発化している。本会計基準は、主としてストック・オプション取引の会計処理及び開示を明らかにすることを目的としている。

会計基準

用語の定義

2. 本会計基準における用語の定義は次のとおりとする。

(1) [ ? ]とは、自社の株式(財務諸表を報告する企業の株式)を原資産とする [ ? ](一定の金額の支払により、 [ ? ]である自社の株式を取得する権利)をいう。 [ ? ]はこれに該当する。

なお、本会計基準においては、企業が、財貨又はサービスを取得する対価として自社株式オプションを取引の相手方に付与し、その結果、自社株式オプション保有者の権利行使に応じて自社の株式を交付する義務を負う場合を取り扱っている。

(2) [ ? ]とは、[ ? ]のうち、特に企業がその[ ? ](本項(3))に、[ ? ](本項(4))として付与するものをいう。ストック・オプションには、権利行使により対象となる株式を取得することができるというストック・オプション本来の権利を獲得すること(以下「権利の確定」という。)につき条件が付されているものが多い。当該権利の確定についての条件(以下「権利確定条件」という。)には、勤務条件(本項(10))や業績条件(本項(11))がある。

(3) [ ? ]とは、企業と雇用関係にある使用人のほか、企業の取締役、会計参与、監査役及び執行役並びにこれに準ずる者をいう。

(4) [ ? ]とは、企業が従業員等から受けた労働や業務執行等のサービスの対価として、従業員等に給付されるものをいう。

(5) 「行使価格」とは、ストック・オプションの権利行使にあたり、払い込むべきものとして定められたストック・オプションの単位当たりの金額をいう。

(6) 「付与日」とは、ストック・オプションが付与された日をいう。会社法(平成 17 年法律第 86 号)にいう、募集新株予約権の割当日(会社法第 238 条第 1 項第 4 号)がこれにあたる。

(7) 「権利確定日」とは、権利の確定した日をいう。権利確定日が明らかではない場合には、原則として、ストック・オプションを付与された従業員等がその権利を行使できる期間(以下「権利行使期間」という。)の開始日の前日を権利確定日とみなす。

(8) 「権利行使日」とは、ストック・オプションを付与された者がその権利を行使したことにより、行使価格に基づく金額が払い込まれた日をいう。

(9) 「対象勤務期間」とは、ストック・オプションと報酬関係にあるサービスの提供期間であり、付与日から権利確定日までの期間をいう。

(10) 「勤務条件」とは、ストック・オプションのうち、条件付きのものにおいて、従業員等の一定期間の勤務や業務執行に基づく条件をいう。

(11) 「業績条件」とは、ストック・オプションのうち、条件付きのものにおいて、一定の業績(株価を含む。)の達成又は不達成に基づく条件をいう。

(12) 「公正な評価額」とは、一般に、市場において形成されている取引価格、気配値又は指標その他の相場(以下「市場価格」という。)に基づく価額をいうが、市場価格がない場合でも、当該ストック・オプションの原資産である自社の株式の市場価格に基づき、合理的に算定された価額を入手できるときには、その合理的に算定された価額は公正な評価額と認められる。また、単位当たりの公正な評価額を「公正な評価単価」という。

(13) 「失効」とは、ストック・オプションが付与されたものの、権利行使されないことが確定することをいう。失効には、権利確定条件が達成されなかったことによる失効(以下「権利不確定による失効」という。)と、権利行使期間中に行使されなかったことによる失効(以下「権利不行使による失効」という。)とがある。

(14) 「公開企業」とは、株式を証券取引所に上場している企業又はその株式が組織された店頭市場に登録されている企業をいう。「未公開企業」とは、公開企業以外の企業をいう。なお、ここにいう証券取引所及び店頭市場には海外の証券取引所及び店頭市場を含み、また、組織された店頭市場とは、株価を公表するシステムが存在する店頭市場をいう。

(15) ストック・オプションに係る「条件変更」とは、付与したストック・オプションに係る条件を事後的に変更し、ストック・オプションの公正な評価単価、ストック・オプション数又は合理的な費用の計上期間のいずれか 1つ以上を意図して変動させることをいう。

範 囲

3. 本会計基準は、次の取引に対して適用される。

(1) 企業がその従業員等に対しストック・オプションを付与する取引

(2) 企業が[ ? ]の取得において、[ ? ]として[ ? ]する取引であって、(1)以外のもの

(3) 企業が[ ? ]の取得において、[ ? ]として[ ? ]を交付する取引なお、(2)又は(3)に該当する取引であっても、企業会計基準第 21 号「企業結合に関する会計基準」(以下「企業結合会計基準」という。)等、他の会計基準の範囲に含まれる取引については、本会計基準は適用されない。

ストック・オプションに関する会計処理

権利確定日以前の会計処理

4. ストック・オプションを付与し、これに応じて企業が[ ? ]は、その取得に応じて[ ? ]として計上し、対応する金額を、ストック・オプションの [ ? ]又は [ ? ]が確定するまでの間、貸借対照表の[ ? ][ ? ]として計上する。

5. 各会計期間における費用計上額は、[ ? ]のうち、[ ? ]を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき[ ? ]である。[ ? ]は、[ ? ][ ? ]を乗じて算定する。

6. ストック・オプションの公正な評価単価の算定は、次のように行う。

(1) 付与日現在で算定し、第 10 項(1)の条件変更の場合を除き、その後は見直さない。

(2) ストック・オプションは、通常、市場価格を観察することができないため、株式オプションの合理的な価額の見積りに広く受け入れられている算定技法を利用することとなる。算定技法の利用にあたっては、付与するストック・オプションの特性や条件等を適切に反映するよう必要に応じて調整を加える。ただし、失効の見込みについてはストック・オプション数に反映させるため、公正な評価単価の算定上は考慮しない。

7. ストック・オプション数の算定及びその見直しによる会計処理は、次のように行う。

(1) 付与されたストック・オプション数(以下「付与数」という。)から、 [ ? ]による [ ? ]の見積数を控除して算定する。

(2) 付与日から権利確定日の直前までの間に、 [ ? ]による [ ? ]の見積数に重要な変動が生じた場合(第 11 項の条件変更による場合を除く。)には、これに応じてストック・オプション数を見直す。

これによりストック・オプション数を見直した場合には、見直し後のストック・オプション数に基づくストック・オプションの公正な評価額に基づき、その期までに費用として計上すべき額と、これまでに計上した額との差額を見直した期の [ ? ]として計上する。

(3) 権利確定日には、ストック・オプション数を権利の確定したストック・オプション数(以下「権利確定数」という。)と一致させる。

これによりストック・オプション数を修正した場合には、修正後のストック・オプション数に基づくストック・オプションの公正な評価額に基づき、権利確定日までに費用として計上すべき額と、これまでに計上した額との差額を権利確定日の属する期の損益として計上する。

権利確定日後の会計処理

8. ストック・オプションが[ ? ]され、これに対して[ ? ]した場合には、[ ? ]として計上した額(第 4 項)のうち、当該[ ? ][ ? ]に振り替える。

なお、新株予約権の行使に伴い、当該企業が自己株式を処分した場合には、自己株式の[ ? ]と、新株予約権の[ ? ]及び権利行使に伴う[ ? ]の合計額との差額は、[ ? ]であり、平成 17 年 12 月改正の企業会計基準第 1 号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」第 9 項、第 10 項及び第 11 項により会計処理を行う。

9. [ ? ]が生じた場合には、新株予約権として計上した額(第 4 項)のうち、当該[ ? ][ ? ]として計上する。この会計処理は、当該失効が確定した期に行う。

ストック・オプションに係る条件変更の会計処理

ストック・オプションの公正な評価単価を変動させる条件変更

10. ストック・オプションにつき、行使価格を変更する等の条件変更により、公正な評価単価を変動させた場合には、次のように会計処理する。

(1) 条件変更日(条件変更が行われた日のうち、特に条件変更以後をいう。)におけるストック・オプションの公正な評価単価が、付与日における公正な評価単価を上回る場合には、第 5 項の定めに基づき条件変更前から行われてきた、付与日におけるストック・オプションの公正な評価単価に基づく公正な評価額による費用計上を継続して行うことに加え、条件変更日におけるストック・オプションの公正な評価単価が付与日における公正な評価単価を上回る部分に見合う、ストック・オプションの公正な評価額の増加額につき、以後追加的に第 5 項の定めに基づく費用計上を行う。

(2) 条件変更日におけるストック・オプションの公正な評価単価が付与日における公正な評価単価以下となる場合には、条件変更日以後においても、第 5 項の定めに基づき条件変更前から行われてきた、ストック・オプションの付与日における公正な評価単価に基づく公正な評価額による費用計上を継続する。

なお、新たな条件のストック・オプションの付与と引換えに、当初付与したストック・オプションを取り消す場合には、実質的に当初付与したストック・オプションの条件変更と同じ経済実態を有すると考えられる限り、ストック・オプションの条件変更とみなして会計処理を行う。

ストック・オプション数を変動させる条件変更

11. ストック・オプションにつき、権利確定条件を変更する等の条件変更により、ストック・オプション数を変動させた場合には、条件変更前から行われてきた、第 5 項の定めに基づく費用計上を継続して行うことに加え、条件変更によるストック・オプション数の変動に見合う、ストック・オプションの公正な評価額の変動額を、以後、合理的な方法に基づき、残存期間にわたって計上する。

費用の合理的な計上期間を変動させる条件変更

12. ストック・オプションにつき、対象勤務期間の延長又は短縮に結びつく勤務条件の変更等により、費用の合理的な計上期間を変動させた場合には、当該条件変更前の残存期間に計上すると見込んでいた金額を、以後、合理的な方法に基づき、新たな残存期間にわたって費用計上する。

未公開企業における取扱い

13. 未公開企業については、ストック・オプションの公正な評価単価に代え、ストック・オプションの単位当たりの本源的価値の見積りに基づいて会計処理を行うことができる。この場合、本会計基準の他の項で「公正な評価単価」を、「単位当たりの本源的価値」と読み替えてこれを適用する。この結果、特に第 6 項(1)の適用に関しては、付与日現在でストック・オプションの単位当たりの本源的価値を見積り、その後は見直さないこととなる。

ここで、「単位当たりの本源的価値」とは、算定時点においてストック・オプションが権利行使されると仮定した場合の単位当たりの価値であり、当該時点におけるストック・オプションの原資産である自社の株式の評価額と行使価格との差額をいう。

財貨又はサービスの取得の対価として自社株式オプションを付与する取引の会計処理

14. 企業が従業員等からサービスを取得する対価としてストック・オプションを用いる取引について定めた前項までの会計処理は、取引の相手方や取得する財貨又はサービスの内容にかかわらず、原則として、取得の対価として自社株式オプションを用いる取引一般に適用される。ただし、次の点に留意する必要がある。

(1) 取得した財貨又はサービスが、他の会計基準に基づき資産とされる場合には、当該他の会計基準に基づき会計処理を行う。

(2) 取得した財貨又はサービスの取得価額は、対価として用いられた自社株式オプションの公正な評価額若しくは取得した財貨又はサービスの公正な評価額のうち、いずれかより高い信頼性をもって測定可能な評価額で算定する。

(3) 自社株式オプションの付与日における公正な評価単価の算定につき、市場価格が観察できる場合には、当該市場価格による。

財貨又はサービスの取得の対価として自社の株式を交付する取引の会計処理

15. 企業が財貨又はサービスの取得の対価として、自社の株式を用いる取引については、次のように会計処理を行う。

(1) 取得した財貨又はサービスを資産又は費用として計上し、対応額を払込資本として計上する。

(2) 取得した財貨又はサービスの取得価額は、対価として用いられた自社の株式の契約日における公正な評価額若しくは取得した財貨又はサービスの公正な評価額のうち、いずれかより高い信頼性をもって測定可能な評価額で算定する。

開 示

16. 次の事項を注記する。

(1) 本会計基準の適用による財務諸表への影響額

(2) 各会計期間において存在したストック・オプションの内容、規模(付与数等)及びその変動状況(行使数や失効数等)。なお、対象となるストック・オプションには、適用開始より前に付与されたものを含む(第 17 項)。

(3) ストック・オプションの公正な評価単価の見積方法

(4) ストック・オプションの権利確定数の見積方法

(5) ストック・オプションの単位当たりの本源的価値による算定を行う場合(第 13 項)には、当該ストック・オプションの各期末における本源的価値の合計額及び各会計期間中に権利行使されたストック・オプションの権利行使日における本源的価値の合計額(第 60 項から第 63 項)

(6) ストック・オプションの条件変更の状況

(7) 自社株式オプション又は自社の株式に対価性がない場合には、その旨及びそのように判断した根拠(第 29 項)財貨又はサービスの対価として自社株式オプション又は自社の株式を用いる取引(ストック・オプションを付与する取引を除く。)についても、ストック・オプションを付与する取引に準じて、該当する事項を注記する。

適用時期及び経過措置 (省略)

結論の背景

経 緯

21. 我が国では、平成 13 年 11 月の商法改正により新株予約権制度が導入されて以来、新株予約権のストック・オプションとしての利用が活発化し、また海外においても、ストック・オプション等の会計基準が整備されつつあったことから、当委員会では、平成 14年 5 月にストック・オプション等専門委員会を設置して、本会計基準及びその適用指針の開発を進めてきた。これまでの検討の経緯は、概ね次のとおりである。

当委員会はまず、「わが国におけるストック・オプション制度に関する実態調査」(以下「実態調査」という。)を実施するとともに、この分野における国際的な動向に関する基礎調査の結果を踏まえ、会計基準を開発する上で考慮すべき基本的な論点を整理し、平成 14 年 12 月に「ストック・オプション会計に係る論点の整理」(以下「論点整理」という。)として公表した。これに関して、コメントを求めるとともに、公聴会を
開催し公述人より意見を聴取した。

当委員会では、このようにして得られたコメント、公述意見や実態調査の結果を踏まえて慎重に審議を重ね、平成 16 年 12 月に、会計処理の枠組みを企業会計基準公開草案第 3 号「ストック・オプション等に関する会計基準(案)」(以下「公開草案第 3号」という。)として公表した。その後、これに対して寄せられたコメントを踏まえ、公開草案第 3 号の見直しを進めるとともに、その適用に際して必要と考えられる適用指針の開発を行った。平成 17 年 10 月には、その結果を、企業会計基準公開草案第 11号「ストック・オプション等に関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第 14 号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針(案)」として公表し、これに対して寄せられたコメントを踏まえて、さらに検討を加えた。

本会計基準及びその適用指針は、当委員会における以上のような検討の結果として公表されるものである。

なお、公開草案第 3 号の検討の過程で、重要な論点の 1 つとなった、「ストック・オプションの権利の行使又は失効までの間の費用認識の相手勘定」の問題に関しては、貸借対照表における貸方項目の区分表示のあり方全般として検討する必要があると判断し、そのためのプロジェクトを新たに立ち上げ、この中で、公開草案第 3 号に対して寄せられたコメントの内容も十分に斟酌しつつ審議を行った。その結果は、平成 17年 12 月に、企業会計基準第 5 号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第 8 号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針」として公表されており、本会計基準の内容もこれに沿ったものである。

22. 会社法(平成 17 年法律第 86 号)においては、本会計基準の処理に対応して、募集新株予約権について、「割当日」と「払込期日」を区分して、ストック・オプションを付与された者が、その割当日(本会計基準にいう付与日)から新株予約権者になることを明らかにするとともに、払込金額が存在する場合については、払込期日までに払い込めばよいこととされている(もし、払込期日までに払込金額全額の払込みがなされない場
合には、権利行使できないこととされている。)(会社法第 245 条及び第 246 条)。

また、ストック・オプションの発行の際に払込金額を定めた場合には、本会計基準の処理に対応して、従業員等がサービス提供を行うことにより、従業員等が株式会社に対して報酬債権を取得し、新株予約権者は、株式会社の承諾を得て、払込みに代えて、当該株式会社に対する債権をもって相殺するという法的な構成を行うことが可能とされている(会社法第 246 条第 2 項)。

なお、ストック・オプションについては、会社法上の払込金額の有無又は多寡にかかわらず、本会計基準を適用の結果算定された金額で費用及び新株予約権の計上を行うとともに(第 4 項及び第 5 項)、その行使があった場合には、これを前提に払込資本への計上等の会計処理(第 8 項)を行うことに留意する必要がある。

範 囲

範囲の考え方

23. 本会計基準の検討は、平成 13 年 11 月の商法改正における新株予約権制度の導入に伴い、新株予約権のストック・オプションとしての利用が活発化していることを踏まえ、このような取引の会計処理を明らかにするという要請に応えるために行われたものであり、本会計基準が適用対象として中心的に想定する取引は、従業員等に報酬として付与される自社株式オプション(ストック・オプション)である。従業員等に付与される自社株式オプションは、一般的に報酬としての性格を持つと考えられる。このように、本会計基準の一義的な目的は、従業員等に対する報酬として、現金等の会社財産ではなく、自社株式オプションを付与する取引の会計処理を明らかにすることである。

24. 本会計基準では、親会社が子会社の従業員等に、親会社株式を原資産とした株式オプションを付与する取引についても検討した。もともと、子会社とその従業員等との間には、雇用や業務執行に係る継続的な契約関係があり、両者の間でこれに基づくサービスと報酬の授受が行われている。子会社の従業員等に、親会社株式のオプションが付与された場合に、これに対応して量又は質の面で追加的に提供されると考えられるサービスの直接の受領者もまた子会社である。しかし、親会社が子会社の従業員等に自社株式オプションを付与するのは、子会社の従業員等に対し、親会社自身の子会社に対する投資の価値を結果的に高めるようなサービス提供を期待しているためと考えられる。したがって、このような取引にも対価性を認めることができ、第 3 項(2)の取引に該当するものとして本会計基準の適用範囲に含まれると考えられる。

25. 第 21 項で述べた検討の経緯から、本会計基準においては、企業が従業員等からサービスの提供を受ける際に、対価として自社株式オプションを付与するストック・オプションの取引に係る会計上の取扱いを明らかにすることを主眼としている(第 23 項)。しかしながら、ストック・オプション取引の性質のうち会計的に重要な部分は、企業がサービス等を取得する際の対価として自社株式オプションを用いるという点にあると考えられる。この点は、取引の相手方が自社の従業員等であるか否か、及び企業が取得するものの内容が労働サービス等であるか否かにかかわらず、自社株式オプションを財貨又はサービスの取得の対価として用いる取引全般に共通しており、このような取引全体に整合的な会計上の取扱いが求められるものと考えられる。そのため、本会計基準では、ストック・オプションに関する会計処理を中心的な適用範囲として想定しつつも、企業が自社株式オプションをこのような対価として用いる取引一般についても適用範囲に含めることとした。

26. 自社株式オプションを対価として用いた場合には、権利行使が行われてはじめて自社の株式を交付することとなるが、当初から自社の株式を対価として用いる取引も想定される。本会計基準では、このような財貨又はサービスの取得の対価として自社の株式の交付に結び付き得る方法を選択した場合の取引についても、適用範囲に含めている。

自社の株式を対価とする取引は、自社株式オプションを対価とした場合とは異なり、権利の行使や失効に係る会計処理上の問題は生じない。しかし、対価の内容が自社の株式の交付に結び付く(又はその可能性がある)という点では、自社株式オプションと共通であり、このような対価の付与又は交付によって取得した財貨又はサービスを財務諸表上で認識すべきか否かという点は、両者に共通する問題である。

範囲に含まれない取引

27. 本会計基準は、第 3 項で述べた取引に適用される。したがって、本会計基準は、次のような取引には適用されない。

(1) 自社株式オプション又は自社の株式を用いない取引(第 28 項)

(2) 付与した自社株式オプション又は交付した自社の株式が、財貨又はサービスの取得の対価にあたらない場合(第 29 項)

(3) デット・エクイティ・スワップ取引(第 30 項)

(4) 取得するものが事業である場合(第 31 項)

(5) 従業員持株制度において自社の株式購入に関し、奨励金を支出する取引(第 32 項)

(6) 敵対的買収防止策として付与される自社株式オプション(第 33 項)

28. 企業が従業員等に付与する報酬の額や、財貨又はサービスの取得に際して付与する対価の額が、何らかの形で自社の株式の市場価格に連動するものであっても、自社株式オプションや自社の株式を用いない限り、本会計基準の適用対象とはならない。

ストック・オプションに関する会計処理を取り扱っている他の国際的な会計基準においては、取得の対価として自社株式オプションや自社の株式を用いる取引のみならず、対価として現金を支払うものの、その金額が契約等により自社の株式の市場価格と連動することとされている取引や、企業又は従業員等の選択により、自社の株式又はその市場価格に基づく価額に相当する現金が交付される取引についても取り扱っているものがある。

しかし、第 23 項で述べたとおり、本会計基準は、我が国におけるストック・オプション制度の運用の実態に即して、その会計処理を明らかにする必要性に応えることを主な目的とするものであることから、自社株式オプションや自社の株式を財貨又はサービスの取得の対価とする取引に限って検討を行った。

29. 本会計基準は、付与した自社株式オプションや交付した自社の株式が、取得の対価として用いられることが前提となっている。経済的に合理的な行動を行う企業が自社株式オプションや自社の株式を付与又は交付するからには、それらは基本的に対価性を有していると考えられる。そうではない場合は、企業が当該企業の株主としての地位を有する者に対して、その地位に基づき自社株式オプションや自社の株式を付与又は交付したが、それらの者の一部がたまたま従業員等でもあるといった場合を除いては、極めて稀であると考えられる。そのため、企業が自社株式オプションや自社の株式を付与又は交付する取引に関しては、対価性があることを当然の前提として基準を設けるべきだとする意見がある。しかし、論点整理に対するコメントや公聴会における公述意見の中には、ストック・オプションの対価性自体に疑問を呈するものもあった。そのため、本会計基準の導入に際しては、企業が自社株式オプションや自社の株式を付与又は交付する取引であっても、対価性の存在しないことを立証できる場合には、本会計基準の適用対象外とした。ただし、対価性がないと判断するためには、対価性の推定を覆すに足りるだけの明確な反証が必要と考えられ、その反証の内容につき開示を求めることとした(第 16
項(7))。

30. 本会計基準が適用されるのは、企業が自社の従業員等にストック・オプションを付与する取引を含め、企業が財貨又はサービスを取得する取引において、対価として自社株式オプションや自社の株式を用いる取引である(第 3 項)。したがって、債権者と債務者の事後の合意に基づき、債権者側から見て債権を株式とする取引である、いわゆるデット・エクイティ・スワップ取引は、本会計基準の適用範囲に含まれない。

31. 自社株式オプションや自社の株式を対価として取得するものが事業にあたる場合には、企業結合会計基準が適用され、本会計基準の適用対象とはならない(第 3 項)。

32. 企業によっては、いわゆる従業員持株制度等、従業員が当該企業の株式を購入する上での便宜を図るための制度を設けている場合がある。このような制度において、企業側から従業員等に対して何らかの経済的支援が行われている場合にも、それらの経済的支援は当初から奨励金等として報酬の額に加算される形をとっており、既に財務諸表において認識されていることが通常である。このような取引は本会計基準の適用対象とはならない。

33. 敵対的買収防止策として、一定の者に自社株式オプションが付与される場合があるが、このような自社株式オプションは財貨又はサービスを取得する対価として付与されているわけではなく、第 3 項の適用範囲には含まれないと考えられる。

このような自社株式オプションの付与は、通常、第 37 項にいう、「対価関係にある給付の受入れを伴わない取引」に該当すると考えられ、そのように対価性のないことが明確である取引の場合には、当該取引に関して費用を認識しないことになる。 

ストック・オプションに関する会計処理

取得したサービスの認識

(論点整理に対するコメント等)

34. 費用認識の要否に関する論点整理に対しては多くのコメントや公述意見が寄せられたが、会計上の考え方に関する主な指摘事項は、次のように整理することができる。

(1) 費用認識に根拠があるとする指摘(第 35 項)

従業員等は、[ ? ]を対価としてこれと引換えに企業に[ ? ]し、企業はこれを[ ? ]しているから、費用認識に根拠がある。

(2) 費用認識の前提条件に疑問があるとする指摘(第 36 項)

費用認識に根拠があるとする指摘の前提となっている、ストック・オプションがサービスに対する対価として付与されているという前提(対価性)に疑問がある。

(3) 費用認識に根拠がないとする指摘(第 37 項及び第 38 項)

ストック・オプションの付与によっても、新旧株主間で[ ? ]が生じるに過ぎないから、 現行の会計基準の枠組みの中では費用認識には根拠がない。また、ストック・オプションを付与しても、企業には現金その他の[ ? ]が生じないため、費用認識に根拠がない。

(4) 見積りの信頼性の観点から、費用認識が困難又は不適当であるとする指摘(第 40項)

ストック・オプションの公正な評価額の見積りに信頼性がない。

(費用認識に根拠があるとする指摘の検討)

35. 費用認識に根拠があるとする指摘は、従業員等に付与された[ ? ]を対価として、これと引換えに、企業に追加的に[ ? ]され、企業に[ ? ]することとなった[ ? ]したことに費用認識の根拠があると考えるものである。

企業に帰属し、貸借対照表に計上されている[ ? ]した場合に費用認識が必要である以上、企業に[ ? ]している[ ? ]した場合にも費用を認識するのが整合的である。企業に帰属したサービスを貸借対照表に計上しないのは、単にサービスの性質上、[ ? ]がなく取得と同時に消費されてしまうからに過ぎず、その消費は[ ? ]と本質的に何ら異なるところはないからである。

(費用認識の前提条件に疑問があるとする指摘の検討)

36. 前項の議論は、自社株式オプションが、従業員等によって提供されるサービスの対価として付与されたものであるとの理解が前提となっており、対価である自社株式オプションと引換えに、サービスが企業に帰属することになったと考えるものであるが、これに対して、そもそも従業員等に付与された自社株式オプションの対価性に疑問があるとの指摘もある。例えば、論点整理に対するコメントの中には、従業員等に付与される自社株式オプションの価値は直接的には当該企業の株価と連動しており、サービスの提供と間接的な結び付きはあっても、必ずしもこれと十分に連動しているとはいえないとの指摘があるが、これは、このような自社株式オプションの対価性を問題にしているものと解釈できる。

しかし、一般的には、合理的な経済活動を営んでいる企業が見返りも無く自社株式オプションを付与しているとは考えにくい。そのため、審議の中では、企業が従業員等に自社株式オプションを付与した場合には、そのような自社株式オプションは、基本的に報酬性を有するものと理解すべきと考えられた。本会計基準の検討に際して実施した実態調査の結果を見ても、過半の企業が、従業員等に付与した自社株式オプションが報酬であるとの認識を持っている旨回答している。さらに、直接的に報酬であるとは回答していない企業についても、業績向上・モチベーション増進等を目指したインセンティブ制度として付与していると回答しているものなど、実質的に報酬として付与しているとみられる例がほとんどであった。同じ調査の中で、圧倒的な多数がストック・オプション制度の目的として勤労意欲の増進を挙げていることからも明らかなように、従業員等に付与された自社株式オプションが、多かれ少なかれインセンティブ効果を有すること、すなわち、これを従業員等に付与した場合に量又は質の面で追加的なサービスの提供が期待されること自体については、あまり異論はないものと考えられた。自社株式オプションの価値が当該企業の株価と連動しているのは確かであるが、これをストック・オプションとして用いる場合には、その付与日における価値を前提として、サービス取得の対価として用いていると考えることができる(第44 項)。

もっとも、第 29 項で述べたとおり、従業員等に付与された自社株式オプションについて、対価性がないことが立証できる場合には、本会計基準の適用対象外としている。

(費用認識に根拠がないとする指摘の検討)

37. 費用認識に根拠がないとする指摘の背景として、現行の会計基準の枠組みにおいては、単に新旧株主間で[ ? ]が生じるだけの取引では費用認識を行っていないことが挙げられる。例えば、新株が時価未満で発行された場合には、新株を引き受ける者が当該株式の時価と発行価格との差額分の[ ? ]を享受する反面、既存株主にはこれに相当する持分の希薄化が生じ、新旧株主間で[ ? ]が生じている。このような場合、現行の会計基準の枠組みの中では、企業の株主持分の内部で[ ? ]が生じたに過ぎないと考え、時価と発行価額との差額については特に会計処理を行わない。もし、サービスの対価として従業員等にこれを付与する取引も会計上これと同様の取引であると評価することができれば、現行の会計基準の枠組みの中では[ ? ]に根拠はないということになる。確かにストック・オプションの付与も新旧株主間における富の移転を生じさせ得るものではあるが、新旧株主間において富の移転を生じさせたからといって、それだけで[ ? ]が否定されるわけではない。例えば、ストック・オプションに代えて株式そのものを発行した場合でも新旧株主間における富の移転は生じ得るが、そのことをもって、資産の取得や費用の発生が認識されないということにはならない。ストック・オプションは、権利行使された場合に新株が時価未満で発行されることに伴ってオプションを付与された側に生ずる利益(付与時点では、その利益に対する期待価値)を、サービスの対価として付与するものであり、この取引の結果、企業に帰属することとなった[ ? ][ ? ]することにより、費用を生じる取引としての性格を有していると考えられる。

このように、同じように新旧株主間の富の移転を生ずる取引であっても、従業員等に対してストック・オプションを付与する取引のように、対価として利用されている取引(対価関係にあるサービスの受領・消費を費用として認識する。)と、自社の株式の時価未満での発行のように、発行価額の払込み以外に、対価関係にある給付の受入れを伴わない取引とは異なる種類の取引であり、この 2 つを会計上同様の取引として評価する本項冒頭に掲げた指摘は必ずしも成り立たないと考えられる。

38. 費用認識に根拠がないとする指摘には、前項の指摘の他、費用として認識されているものは、いずれかの時点で現金その他の[ ? ]に結び付くのが通常であるが、従業員等にサービス提供の対価としてストック・オプションを付与する取引においては、付与時点ではもちろん、サービスが提供され、それを消費した時点においても、[ ? ]はないことを理由とするものがある。しかし、第 35 項で述べたように、提供されたサービスの消費も財貨の消費と整合的に取り扱うべきであり、ストック・オプションによって取得されたサービスの消費であっても、消費の事実に着目すれば、企業にとっての費用と考えられる。

さらにこの指摘は、サービスの提供を受けることの対価として会社財産の流出を伴う給付がないことに着目したものとも考えられる。確かに、サービスの消費があっても対価の給付がない取引では、費用は認識されない(仮に認識するとしても、無償でサービスの提供を受けたことによる利益と相殺され、損益に対する影響はない。)。しかし、ストック・オプションを付与する取引では、株式を時価未満で購入する条件付きの権利を対価としてサービスの提供を受けるのであり、[ ? ]でサービスの提供を受ける取引とは異なる。

このように考えると、対価としての[ ? ]は費用認識の必要条件ではなく、企業に現金その他の[ ? ]がない場合には費用認識は生じないという主張は必ずしも正しくない。例えば、現行の会計基準の枠組みの中でも、償却資産の[ ? ]を受けた場合や、償却資産の[ ? ]を受けた場合には、対価としての[ ? ]はないが、当該資産の[ ? ]は認識されることになる。

39. 前項までの検討から、ストック・オプションに対価性が認められる限り、これに対応して取得した[ ? ]を費用として認識することが適当であると考えられる。

(見積りの信頼性の観点から、費用認識が困難又は不適当であるとする指摘の検討)

40. 以上の費用認識の根拠とは別に、「ストック・オプションの公正な評価額の見積りに信頼性がない」として、ストック・オプションの価値の見積りの信頼性の観点から、費用認識が困難又は不適当であるとする指摘がある。公開企業については、現在利用可能な算定技法を用いれば、投資家にとって十分有用な情報が提供されることは、他の国際的な会計基準においても、広く認められている。また、ストック・オプションの価値の見積りの信頼性が特に問題となるのは、対象となる企業が未公開企業である場合であり、これについては、別途、未公開企業に関する取扱いとして検討した(第 60 項から第 63項)。

ストック・オプションの権利の行使又は失効までの間の費用認識の相手勘定

41. 新株予約権は、将来、権利行使され払込資本になる可能性がある(第 8 項)一方、失効して払込資本にならない可能性もある。このように、発行者側の新株予約権は、権利行使の有無が確定するまでの間、その性格が確定しないことから、これまでは、仮勘定として負債の部に計上することとされていた。しかし、新株予約権は、本来は返済義務のある負債ではないことから、公開草案第 3 号においても費用認識の相手勘定の表示区分が論点となり、この点について特にコメントが求められた。一方、この問題は単にストック・オプションの問題にとどまらない広がりを持つことから、当委員会では、これを契機として、貸借対照表における貸方項目の区分表示のあり方全般について検討を行うプロジェクトを別途立ち上げ、この問題の検討を同プロジェクトに委ねることとした。公開草案第 3 号に対して寄せられたコメントの中で、この問題に関係するコメントについては、同プロジェクトの中で十分に検討された。同プロジェクトの検討結果は、企業会計基準第 5 号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」として公表されており、その中で、新株予約権は、負債の部に表示することは適当ではなく、純資産の部に表示することとされた。

ストック・オプションが失効した場合の会計処理

42. ワラントや新株予約権の会計処理等に関する既存の会計基準は、これらが失効した場合に、対応する部分を利益に計上することを求めている(企業会計基準第 10 号「金融商品に関する会計基準」第 38 項)。これとの整合性の観点からは、ストック・オプションが失効した場合にも、対応する部分を利益に計上すべきと考えられる。しかし、論点整理に対するコメントの中には、権利不行使による失効のケースについて、利益に計上することを要しないとの見解もみられたことから、当委員会では、既存の会計基準との整合性を覆すだけの合理的な理由があるか否かが検討されたが、そのような特段の理由は見出されなかった。既存の会計基準と整合的なストック・オプション等の会計処理については、次のように理解することができることから、妥当であると判断した。

43. ストック・オプションは、権利行使された場合に新株が時価未満で発行される(又は自己株式が時価未満で交付される)ことに伴ってオプションを付与された側に生ずる利益を根拠とした経済的価値を有している。このように経済的価値を有するストック・オプションを、企業が一定の条件を満たすサービスの提供を期待して従業員等に付与した場合には、企業と従業員等との間にいわば条件付の契約が締結されていると考えることができる。

44. 企業の取引が経済合理性に基づくものであるならば、この契約についても等価での交換が前提となっていると考えられる。すなわち、企業は、ストック・オプションを付与(給付)する対象者に対して、権利確定条件(勤務条件や業績条件)を満たすようなサービスの提供(反対給付)を期待し、契約締結時点であるストック・オプションの付与時点において、企業が期待するサービスと等価であるストック・オプションを付与していると考えられる。

45. ただし、ストック・オプションの付与時点において前項のような契約が締結されたとしても、それが取引として完結するのは、両当事者が、実際に契約条件に沿った給付を果たした場合である。すなわち、付与されるストック・オプションは条件付きのものであることが通常であり、権利確定条件を満たすサービスが提供されてはじめて付与された自社株式オプションの権利が確定する。権利確定条件に沿った給付がなされて取引が完結するか否か、言い換えれば付与されたストック・オプションの権利が確定するか否かが未定の間は、権利が確定する部分を見積って費用計上を行うことになる。

そして、権利確定部分の見積りに基づいて計上していた費用のうち、実績として取引が完結せず権利が確定しないこととなった部分については、その実績に基づいて修正すべきであると考えられる。

46. 取引が完結し、付与されたストック・オプションの権利が確定した後に、株価の低迷等の事情により権利が行使されないままストック・オプションが失効した場合でも、これと引換えに提供されたサービスが既に消費されている以上、過去における費用の認識自体は否定されない。しかし、ストック・オプションは[ ? ]をあらかじめ決められた価格で[ ? ]であるにすぎないから、それが行使されないまま[ ? ]すれば、結果として会社は株式を時価未満で[ ? ]を免れることになる。結果が確定した時点で振り返れば、会社は[ ? ]で提供された[ ? ]したと考えることができる。

このように、新株予約権が行使されずに消滅した結果、新株予約権を付与したことに伴う[ ? ]が、[ ? ]との[ ? ]によらないこととなった場合には、それを[ ? ]に計上した上で[ ? ]に算入する(なお、非支配株主に帰属する部分は、非支配株主に帰属する当期純利益に計上することになる。)。

47. 前項における利益は、原則として[ ? ]に計上し、「[ ? ]」等の科目名称を用いることが適当と考えられる。

公正な評価単価

48. 公正な評価単価とは、一義的には、市場において形成されている取引価格であり(第2 項(12))、本来、ストック・オプションの公正な評価単価の算定についても、市場価格が観察できる限り、これによるべきものと考えられる。しかし、ストック・オプションに関しては、通常、市場価格が観察できないため、株式オプションの合理的な価格算定のために広く受け入れられている、株式オプション価格算定モデル等の算定技法を利用して公正な評価単価を見積ることとした。

「株式オプション価格算定モデル」とは、ストック・オプションの市場取引において、一定の能力を有する独立第三者間で自発的に形成されると考えられる合理的な価格を見積るためのモデルであり、市場関係者の間で広く受け入れられているものをいい、例えば、ブラック・ショールズ式や二項モデル等が考えられる。

49. 本会計基準においては、付与したストック・オプションと、これに応じて提供されたサービスとが対価関係にあることが前提とされており、企業の経済合理性を前提とすれば、当該ストック・オプションとサービスとは、契約成立の時点において、等価で交換されていると考えることができる。等価で交換されていると考える以上、相互に対価関係にある財貨やサービスの間で、いずれかより高い信頼性をもって測定可能な評価額で、対価関係にある他方の財貨又はサービスの価値を算定することとなるが、特に取得するものが従業員等から提供される追加的なサービスである場合には、信頼性をもって測定することができないため、その価値を、付与されたストック・オプションの価値で算定する。

50. ストック・オプションの公正な評価単価は常に変動しているため、その算定の基準日が問題となる。この点については、論点整理の段階で多くのコメントが寄せられたが、ほぼ一致して、付与日を算定の基準日とする見解が支持された。これは、付与日以後のストック・オプションの公正な評価単価の変動はサービスの価値とは直接的な関係を有しないものとみているためと考えられる。

第 44 項で述べたとおり、ストック・オプションを用いた取引においても、他の対価を用いた取引と同様に等価での交換が前提となっていると考えられる。この等価性の判断において前提となっているストック・オプションの価値は、条件付の契約が締結されたといえる、ストック・オプションの付与日における価値であると考えるのが合理的である。そこで、本会計基準では、付与日におけるストック・オプションの公正な評価単価をもとに算定を行うこととした。

ストック・オプション数

51. 第 7 項及び第 9 項に規定するように、ストック・オプションに関する会計処理に関しては、権利不確定による失効数と権利不行使による失効数を反映させる必要がある。前者は、勤務条件や業績条件が達成されないことによる失効数である。このうち、業績条件の中には、株価を条件とするもののように、一般に、権利不確定による失効数を見積ることが困難なものが含まれている。ただし、株価を条件とする業績条件とする場合であっても、例えば、離散時間型モデル等を利用して合理的に見積った失効数を反映することは認められると考えられる。

52. 会計処理にあたっては、ストック・オプションの権利不確定による失効数についても最善の見積りを行うことが原則であると考えられる。しかし、十分な信頼性をもって、ストック・オプションの失効数を見積ることができない場合には、見積りを行うべきではない。また、会計処理上、ストック・オプションの失効数の見積りを行った場合には、その見積方法を注記することとなる(第 16 項(4))。

53. ストック・オプションの権利不行使による失効数については、失効の実績に基づいて会計処理を行うべきである(第 9 項)。ただし、期末において、当該企業の株式の市場価格が行使価格を大幅に下回っており、かつ、当該ストック・オプションの権利行使期間の残存期間が極めて短いため、残る権利行使期間内に株価が行使価格を上回るまで回復する可能性が認められないような場合には、失効数が確定したとみなすことができるものと考えられる。

ストック・オプションに係る条件変更の会計処理

ストック・オプションの公正な評価単価を変動させる条件変更

54. 付与されたストック・オプションに関して、当初の条件を事後的に変更することが考えられる。このような条件変更の態様として様々なものが想定されるが、その典型例は、ストック・オプションの付与後に株価の著しい下落が生じ、権利行使される可能性が減少することにより、当初期待していたインセンティブ効果が大幅に失われたため、これを回復する目的で行使価格を引き下げる場合である。本会計基準では、この行使価格引下げの会計処理をはじめ、ストック・オプションについて事後的に条件変更が行われた場合の会計上の取扱いについて、原則的な考え方を示すこととした。

55. 本会計基準においては、付与日におけるストック・オプションの公正な評価単価に基づく公正な評価額を基礎として、各会計期間における費用計上額を算定することとしている(第 5 項)。しかし、当該ストック・オプションにつき行使価格の引下げ等の条件変更が行われた場合には、これによりストック・オプションの公正な評価単価についての修正が行われたとみることができる。そのため、条件変更が行われた場合には、第5 項の定めに基づき条件変更前から行われてきた、ストック・オプションの付与日における公正な評価単価に基づく費用計上を継続することに加え、条件変更日におけるストック・オプションの公正な評価単価が付与日における公正な評価単価を上回る部分に見合う、ストック・オプションの公正な評価額の増加額につき、以後追加的に、第 5 項の定めに基づく費用計上を行うこととなる(第 10 項(1))。 

56. ただし、ストック・オプションの条件変更日における公正な評価単価が付与日における公正な評価単価を下回る場合についても、前項と同様の会計処理を行おうとすると、条件変更により費用を減額させることになると考えられるが、このように、ストック・オプションの条件を従業員等にとってより価値あるものとすることにより、かえって費用を減額させるというパラドックスを回避するため、ストック・オプションの条件変更日における公正な評価単価が付与日における公正な評価単価を上回る場合には、前項で述べた会計処理によることとし、ストック・オプションの条件変更日における公正な評価単価が付与日における公正な評価単価以下となる場合には、条件変更後においても、付与日における公正な評価単価に基づくストック・オプションの公正な評価額により費用計上を行う、条件変更前からの会計処理を継続することとした(第 10 項(2))。

ストック・オプション数を変動させる条件変更

57. 勤務条件や業績条件等の権利確定条件を変更した場合には、一般にストック・オプション数が変動することになる。ストック・オプション数の見直しの会計処理については、第 7 項(2)に規定があるが、この規定の前提となっているのは、環境の変化等の企業が意図しないストック・オプション数の変動であり、そのため重要な変動が生じた場合には、その影響額を見直した期に損益として計上することとされている。

しかし、企業の意図による条件変更の結果、ストック・オプション数に変動が生じた場合(第 11 項)には、将来にわたる効果を期待して条件変更を行ったものと考えられるため、その影響額は条件変更後、残存期間にわたって反映させることとした。したがって、条件変更によってストック・オプション数の変動が生じた場合には、専ら第 11項の規定が適用され、第 7 項(2)の規定は適用されないこととなる点に留意する必要がある。

費用の合理的な計上期間を変動させる条件変更

58. 条件変更の結果、当該ストック・オプションと対価関係にある対象勤務期間が変動する場合には、厳密にいえば、条件変更の前後で報酬としての同一性を失い、別の報酬に置き換わると理解することもできる。

しかし、行使価格の引下げ等にあわせて、対象勤務期間の延長に結びつく勤務条件の変更が行われることもあり得るため、当初の対象勤務期間が延長又は短縮された場合には、条件変更の問題として取り扱うこととした。

複合的な条件変更

59. 上記 3 つの類型の条件変更は、相互に排他的なものではない。例えば、ストック・オプション数を変動させる勤務条件の変更は、通常、対象勤務期間の変更を伴い、合理的な費用の計上期間をも変動させる場合がある。また、勤務条件の変更は、権利確定日の変更を伴い、権利行使期間の開始日と一致することの多い権利確定日が変更されれば、ストック・オプションの公正な評価単価を算定する上での変数の 1 つである、ストック・オプションの予想残存期間に影響を及ぼす可能性がある。

さらに、行使価格の引下げと同時に、対象勤務期間の延長が行われるなど、複数の条件変更が同時に行われることもあり得る。

このような、複合的な条件変更の場合にも、その会計処理は、それぞれの要素に分解することで対応することになる。

未公開企業における取扱い

60. 未公開企業については、ストック・オプションの公正な評価額について、損益計算に反映させるに足りるだけの信頼性をもって見積ることが困難な場合が多いと考えられる。そこで、未公開企業では一般投資家がいないことも考慮し、本則であるストック・オプションの公正な評価単価に代え、その単位当たりの本源的価値の見積りによることを認めることが検討された。

61. しかし、本源的価値によった場合には、ストック・オプションが、原資産である自社の株式の評価額が行使価格を上回る状態で付与された場合を除き、ストック・オプションの価値がゼロとなる結果、事実上費用が計上されないこととなる。そこで、ストック・オプションの価値を本源的価値によって見積る場合には、当該ストック・オプションの権利行使日に至るまでその本源的価値を見直し、最終的に権利行使日において実現した価値に基づいて費用を計上する方法が検討された。

62. 第 50 項で述べたように、本会計基準は、契約の前提としたストック・オプションの価値で取得するサービスの価値を算定することが合理的であるとの見方を採っている。この見方を採った場合、権利行使日における本源的価値に基づいて、費用を計上するという考え方は、その価値を契約の前提とした付与日におけるストック・オプションの価値の代理数値とみていることになる。しかし、この点については、ストック・オプションの付与日以後の予期せざる株価変動の影響まで含めて、契約の前提とした付与日におけるストック・オプションの価値の代理数値とみなすことができるのか、疑問視する意見も少なくない。

63. このように、権利行使日における本源的価値を、契約の前提とした付与日におけるストック・オプションの価値の代理数値とみることができるか否かについて評価が分かれているため、これを直ちに損益計算に反映させることは適当ではなく、付与日以後のストック・オプションの本源的価値に関しては、注記を求めることが適当と判断した。そこで、損益計算上は、ストック・オプションの本源的価値による算定を行う場合であっても、その付与日における価値によることとし、その後の見直しは求めないこととする一方、そのようなストック・オプションの各期末における本源的価値の合計額及び各会計期間中に権利行使されたストック・オプションの権利行使日における本源的価値の合

計額につき、注記で開示を求めることとした(第 16 項(5))。以上の取扱いは、公開企業の企業集団内にある未公開企業においても異ならない。

さらに、ストック・オプションの公正な評価単価の見積りに、過去の株価の推移等、過去の一定期間の情報を利用する場合には、信頼性のある計算に必要な情報を公開後直ちに収集することが困難な場合もあり得ることから、公開直後の企業についても、ストック・オプションの本源的価値による算定を認める必要があるかどうかが検討された。しかし、公開後の企業については、公開後の日は浅くとも自社の株価を参照することができること、一般投資家のいない未公開企業と同列に考えることはできないこと、及び仮に公開後の日の浅い企業についてもストック・オプションの本源的価値による算定を認めることとした場合には、その範囲を明確に画する必要があるが、一律にその範囲を画することは困難であること等の理由から、未公開企業に限ってストック・オプションの本源的価値による算定を認めることとした。

財貨又はサービスの取得の対価として自社株式オプションを付与する取引の会計処理

64. 前項までは、企業が従業員等から取得するサービスの対価として自社株式オプションを用いる取引について述べている。しかし、第 25 項で述べたように、財貨又はサービスの取得の対価として自社株式オプションを用いる取引であれば、取引の相手方のいかんを問わず、また、取引の結果、取得することとなる財貨又はサービスの内容のいかんを問わず、ストック・オプションの会計処理と整合的な会計処理を適用することが適当と考えられる。そこで、本会計基準では、一般的に取引の対価として自社株式オプションを用いる取引を適用範囲とし、この場合にも、ストック・オプションに関する会計処理と整合的な会計処理が求められることを明らかにした。

取得した財貨又はサービスの取得価額は、対価として用いられた自社株式オプションの公正な評価額若しくは取得した財貨又はサービスの公正な評価額のうち、いずれかより高い信頼性をもって測定可能な評価額で算定することとされており(第 14 項(2))、取得した財貨又はサービスの公正な評価額で算定する場合にも、等価での交換の前提となっている契約成立の時点の価値で算定するのが合理的であると考えられる(第 50 項)。

財貨又はサービスの取得の対価として自社の株式を交付する取引の会計処理

65. 本会計基準では、自社の株式を対価として用いる取引の会計処理についても適用範囲とした(第 26 項)。自社の株式を対価として用いる取引では、自社株式オプションを対価として用いる取引に関して生じる会計上の問題のうち、オプションを対価とすることに起因する問題は生じないため、自社の株式を対価として取得した財貨又はサービスの認識の要否が専らの論点となる。

財貨又はサービスの取得の対価として、自社株式オプションを付与する取引と同様、対価として自社の株式を交付する取引であっても、取得した財貨又はサービスを財務諸表上認識する必要があると考えられる。その論拠については、ストック・オプションについて検討された内容(第 34 項から第 39 項)がそのまま該当し、自社の株式を対価とする取引の結果、企業に帰属することになる財貨又はサービスの認識を行うべきこととなる。

66. 取得した財貨又はサービスの取得価額は、交付した自社の株式の公正な評価額若しくは取得した財貨又はサービスの公正な評価額のうち、いずれかより高い信頼性をもって測定可能な評価額で算定することとされているが(第 15 項(2))、通常、公開企業については、自社の株式の市場価格による信頼性のある測定が可能であり、これに基づいて算定すべきものと考えられる。算定の基準日は、いずれの評価額で算定を行う場合であっても、契約日とすることが合理的であると考えられる(第 50 項)。

適用時期及び経過措置 (省略)

 

財務諸表論 理論暗記 主要な会計基準
モバイルバージョンを終了