一括償却資産や少額減価償却資産などの違いを理解しよう

2020年2月4日

建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、時の経過等によってその価値が減っていき、このような資産を減価償却資産といいます。

減価償却資産の取得にかかった金額は、取得した時に全額必要経費にすることは出来ず、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費としていくよう法令で定められています。この使用可能期間は法定耐用年数として財務省令の別表に定められています。

減価償却とは、減価償却資産の取得かかった金額を一定の方法(定率法及び定額法など)によって各年分の必要経費として配分していく手続のことを指します。

ただし、金額が僅少なものをすべて減価償却すると事務負担も大きくなるので、使用可能期間が1年未満のもの又は取得価額が10万円未満のものについては「少額の減価償却資産」として、その取得にかかった金額の全額を業務に使用し始めた年分の必要経費にすることが可能です。

また、10万円以上20万円未満の資産には「一括償却資産の損金算入制度」、さらに30万円未満の減価償却資産に対して適用できる「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」と言われるものがあります。

これらの混同しそうな制度は、一体どういうものなのでしょうか?

(ここでは法人税法についての少額の減価償却資産などについて説明しています。)

一括償却資産や少額減価償却資産などの違い

そもそも、「少額の減価償却資産」の経費処理については法人税法施行令に規定されています。

10万円未満の減価償却資産については損金経理が可能というものです。

法人税法施行令 第133条

(少額の減価償却資産の取得価額の損金算入)

内国法人がその事業の用に供した減価償却資産(第四十八条第一項第六号及び第四十八条の二第一項第六号(減価償却資産の償却の方法)に掲げるものを除く。)で、前条第一号に規定する使用可能期間が一年未満であるもの又は取得価額(第五十四条第一項各号(減価償却資産の取得価額)の規定により計算した価額をいう。次条第一項において同じ。)が十万円未満であるものを有する場合において、その内国法人が当該資産の当該取得価額に相当する金額につきその事業の用に供した日の属する事業年度において損金経理をしたときは、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

さらに、一括償却資産の損金算入制度というものがあり、取得価額が10万円以上20万円未満の資産において、個別に減価償却をせずに、使用開始した年から3年間にわたり、一括償却資産に計上した資産の取得価額の合計額の3分の1を毎年必要経費に計上していくことが出来ます。

法人税法施行令 第133条の2

(一括償却資産の損金算入)

内国法人が各事業年度において減価償却資産で取得価額が二十万円未満であるもの(第四十八条第一項第六号及び第四十八条の二第一項第六号(減価償却資産の償却の方法)に掲げるもの並びに前条の規定の適用を受けるものを除く。)を事業の用に供した場合において、その内国法人がその全部又は特定の一部を一括したもの(適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(以下この条において「適格組織再編成」という。)により被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人(以下この項において「被合併法人等」という。)から引継ぎを受けた当該被合併法人等の各事業年度において生じた当該一括したものを含むものとし、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(適格現物分配にあつては、残余財産の全部の分配を除く。以下この条において「適格分割等」という。)により分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人(以下この条において「分割承継法人等」という。)に引き継いだ当該一括したものを除く。以下この条において「一括償却資産」という。)の取得価額(適格組織再編成により被合併法人等から引継ぎを受けた一括償却資産にあつては、当該被合併法人等におけるその取得価額)の合計額(以下この項及び第十二項において「一括償却対象額」という。)を当該事業年度以後の各事業年度の費用の額又は損失の額とする方法を選定したときは、当該一括償却資産につき当該事業年度以後の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該一括償却資産の全部又は一部につき損金経理をした金額(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、当該一括償却資産に係る一括償却対象額を三十六で除しこれに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額(適格組織再編成により被合併法人等から引継ぎを受けた当該被合併法人等の各事業年度において生じた一括償却資産につき当該適格組織再編成の日の属する事業年度において当該金額を計算する場合にあつては、当該一括償却資産に係る一括償却対象額を三十六で除し、これにその日から当該事業年度終了の日までの期間の月数を乗じて計算した金額。次項において「損金算入限度額」という。)に達するまでの金額とする。

一括償却資産の損金算入制度は、通常の減価償却計算では資産の取得した初年度は使用期間を月数按分して計算しますが、一括償却資産はたとえ使用期間が6ヵ月だとしても1年として償却費を計算します。

少額減価償却資産の特例は、取得価額が30万円未満の資産について、一定の要件を満たした場合に、使用開始した年に全額必要経費に計上することができるものをいい、中小企業者等にのみ認められている特例です。

租税特別措置法 第67条の5

(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)

第四十二条の四第八項第七号に規定する中小企業者(同項第八号に規定する適用除外事業者に該当するものを除く。)又は同項第九号に規定する農業協同組合等で、青色申告書を提出するもの(事務負担に配慮する必要があるものとして政令で定めるものに限る。以下この項において「中小企業者等」という。)が、平成十八年四月一日から平成三十二年三月三十一日までの間に取得し、又は製作し、若しくは建設し、かつ、当該中小企業者等の事業の用に供した減価償却資産で、その取得価額が三十万円未満であるもの(その取得価額が十万円未満であるもの及び第五十三条第一項各号に掲げる規定その他政令で定める規定の適用を受けるものを除く。以下この条において「少額減価償却資産」という。)を有する場合において、当該少額減価償却資産の取得価額に相当する金額につき当該中小企業者等の事業の用に供した日を含む事業年度において損金経理をしたときは、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。この場合において、当該中小企業者等の当該事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が三百万円(当該事業年度が一年に満たない場合には、三百万円を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額。以下この項において同じ。)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち三百万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額を限度とする。

2 前項の月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月とする。

3 第一項の規定は、確定申告書等に同項の規定の適用を受ける少額減価償却資産の取得価額に関する明細書の添付がある場合に限り、適用する。

4 第一項の規定の適用を受けた少額減価償却資産について法人税に関する法令の規定を適用する場合には、同項の規定により各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額は、当該少額減価償却資産の取得価額に算入しない。

5 前三項に定めるもののほか、第一項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

一括償却資産は大企業を含めたすべての事業者で適用できるのに対して、少額減価償却資産の特例は中小企業者等のみに認められた特例です。また、一括償却資産には1組の取得価額が10万円以上20万円未満の資産と定められていますが、合計金額に上限金額はありません。

少額減価償却資産の特例を適用できるのは取得価額の合計が年間300万円以内に限られています。

中小企業者等が、10万円以上20万円未満の資産を取得したときは、一括償却資産及び少額減価償却資産の特例の選択適用が可能となります。

それぞれの制度をしっかり理解して、有利になるよう適用したいものです。