従業員への食事補助には給与課税される場合がある
よく、企業はヒト・モノ・カネで成り立っていると言われます。
ヒトである従業員は企業の財産として重要なポジションにあるわけで、従業員の頑張りが企業の業績に影響するわけです。
そこで、企業はあらゆる手を使って従業員の士気を上げようとします。
企業は、様々な福利厚生を用意しており、よくあるケースとして食事補助があります。社員食堂を作り、しかも食事代の一部を補助するわけです。
ところで、この食事補助に対して給与課税されるのでしょうか?
現物給与には所得税が課税される
従業員に対して金銭以外の食事や商品などを支給した場合は、現物給与として所得税が課税されます。
所得税基本通達36-15
(経済的利益)
法第36条第1項かっこ内に規定する「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」(以下36-50までにおいて「経済的利益」という。)には、次に掲げるような利益が含まれる。
(1) 物品その他の資産の譲渡を無償又は低い対価で受けた場合におけるその資産のその時における価額又はその価額とその対価の額との差額に相当する利益
(2) 土地、家屋その他の資産(金銭を除く。)の貸与を無償又は低い対価で受けた場合における通常支払うべき対価の額又はその通常支払うべき対価の額と実際に支払う対価の額との差額に相当する利益
(3) 金銭の貸付け又は提供を無利息又は通常の利率よりも低い利率で受けた場合における通常の利率により計算した利息の額又はその通常の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額に相当する利益
(4) (2)及び(3)以外の用役の提供を無償又は低い対価で受けた場合におけるその用役について通常支払うべき対価の額又はその通常支払うべき対価の額と実際に支払う対価の額との差額に相当する利益
(5) 買掛金その他の債務の免除を受けた場合におけるその免除を受けた金額又は自己の債務を他人が負担した場合における当該負担した金額に相当する利益
従業員に対する食事の支給は経済的利益とされ、所得税が課税されます。
ただし、例外規定があります。
一定基準以下の食事補助には所得税は非課税
企業が従業員に対して食事を提供する場合、食事の価額の半額以上を従業員が負担し、会社の負担額を1人当たり月額3,500円(消費税抜)までとしておけば、給与課税の問題は生じません。
注意点としては、上記の要件を満たさない場合は、支給金額の全額が給与課税の対象となります。
所得税法基本通達36-38の2
(食事の支給による経済的利益はないものとする場合)
使用者が役員又は使用人に対して支給した食事(36-24の食事を除く。)につき当該役員又は使用人から実際に徴収している対価の額が、36-38により評価した当該食事の価額の50%相当額以上である場合には、当該役員又は使用人が食事の支給により受ける経済的利益はないものとする。ただし、当該食事の価額からその実際に徴収している対価の額を控除した残額が月額3,500円を超えるときは、この限りでない。
ただし、提供する食事が社員食堂などでの自社調理の場合と他から購入した食事を提供する場合とでは食事の価額の評価が異なります。
所得税法基本通達36-38
(食事の評価)
使用者が役員又は使用人に対し支給する食事については、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に掲げる金額により評価する。(昭50直法6-4、直所3-8改正)
(1) 使用者が調理して支給する食事 その食事の材料等に要する直接費の額に相当する金額
(2) 使用者が購入して支給する食事 その食事の購入価額に相当する金額
まず、自社で栄養士や調理士などを雇入れて社員食堂などで食事を作る場合ですが、食事の材料など直接かかった費用の額で評価して差し支えないこととされています。これに対して、飲食店や共同設立した給食センターから食事を購入する場合は、購入価額で食事の価額を評価しなければなりません。
通常、上記のどちらかで評価することが多いでしょうが、自社の社員食堂で材料を提供した上で給食業者に調理を委託している場合です。この場合は、自社調理と同様に直接材料費の額で評価できることとされています。
仮に給食業者が材料を仕入れて、会社に請求する場合であっても、その材料費の内訳がはっきり区分されている場合には、直接材料費の額で評価して差し支えありません。
給食業者が受け取っている委託料とは別に従業員からも料金を徴収している場合には、他から購入した食事として評価しなければなりません。
仮に、500円の弁当を会社が支給し、本人負担が300円だった場合のケースで考えてみましょう。
①15回支給した場合
(500円-300円)×15日÷108×100=2,727円(消費税抜)
このケースは非課税要件に該当するので給与課税されません。
②20回支給した場合
(500円-300円)×20日÷108×100=3,703円(消費税抜)
このケースは非税要件を満たさないため、3,703円が給与課税されます。3,703円から3,500円を引いた203円が給与課税されるわけではありません。
ところで、一言に食事と言っても、残業時に提供する食事は非課税となっています。
所得税法基本通達36-24
(課税しない経済的利益……残業又は宿日直をした者に支給する食事)
使用者が、残業又は宿直若しくは日直をした者(その者の通常の勤務時間外における勤務としてこれらの勤務を行った者に限る。)に対し、これらの勤務をすることにより支給する食事については、課税しなくて差し支えない。
従業員のために食事を提供した際に非課税とならない場合、従業員から所得税を徴収しなければならず、そうなると手取りが減ってしまいます。
本来は、お得に食事が出来ているのですが、手取りが減ると何となく損した気分になるのではないでしょうか?
しっかりと制度を理解し、従業員が満足する福利厚生の仕組みを作り上げる必要がありますね。