建設会社の「安全協力費」は消費税の課税仕入?それとも不課税仕入?

2020年8月25日

建設会社の帳簿を見ていると、「安全協力費」や「安全活動費」という費用が計上されているのを目にします。

「安全協力費」と書くと、いかにも安全のための費用と考えそうですが、実際のところ徴収しているところに確認してみないと、どういう名目で徴収しているかが判らない、というのがホントのところです。

そこで、「安全協力費」や「安全活動費」なる費用について、どんな勘定科目があてはまるのか、消費税の処理をどうするのかなど、解説していきたいと思います。

そもそも「安全協力費」、「安全活動費」ってどういう費用?

建設現場において、労災保険は元請が保険料を払うようになっています。

下請は支払わなくてよいのかというと、多くは「安全協力費」などの名目で下請けから徴収し、徴収したものから労災保険などの保険料に充てている場合が多いです。

ただし、実際に徴収された金額と保険料掛金の対応関係が明確ではないでしょうし、最近では元請が力関係を利用して強制的に徴収を義務化し、使途は福利厚生等に充てているところもあります。

場合によっては懇親会費用に流用されるケースも多いようです。

建設会社が「安全協力会」というの作り、会社とは別会計で経理処理しているケースが多く、その会費が「安全協力費」というわけです。

「安全協力会」とはその名の通り、安全に工事を行うために、協力会社(下請会社等)に、注意の周知や災害事例を紹介して事故予防を施す目的で作られた会です。

会社によって事業は異なりますが、安全大会を開催したり、月に一度集まって、委員会を開催したりします。安全対策に関して協力会社からの要望、また事務局からの要望等を出しあったりします。

また衛生週間、安全週間にはポスターの配布や記念品を配布したりします。

安全協力会費は、こういった催し等に使われており、会社により、月定額や請け負い額のナンパーセントといった感じで徴収されます。

会費を支払った会社側での経費処理は、会費が無難でしょう。

消費税の課税関係は?

実務上は徴収する側に確認してみて保険料に充てているという場合には消費税は非課税、そうでない場合は課税処理がよい気もしますが、会費とみなされた場合は対価性がない場合は不課税とされる可能性もあります。

したがって、実情で判断するしかありませんね。

まあ、会費ということで不課税で処理しておけば、税務署側からすれば消費税の納付額が増えるので文句は言わないでしょう。

会費に係る関係条文

参考までに会費に関して関連する消費税法基本通達を記載しておきます。

消費税法基本通達5-5-3(会費、組合費等)
同業者団体、組合等がその構成員から受ける会費、組合費等については、当該同業者団体、組合等がその構成員に対して行う役務の提供等との間に明白な対価関係があるかどうかによって資産の譲渡等の対価であるかどうかを判定するのであるが、その判定が困難なものについて、継続して、同業者団体、組合等が資産の譲渡等の対価に該当しないものとし、かつ、その会費等を支払う事業者側がその支払を課税仕入れに該当しないこととしている場合には、これを認める。

(注)
1 同業者団体、組合等がその団体としての通常の業務運営のために経常的に要する費用をその構成員に分担させ、その団体の存立を図るというようないわゆる通常会費については、資産の譲渡等の対価に該当しないものとして取り扱って差し支えない。

2 名目が会費等とされている場合であっても、それが実質的に出版物の購読料、映画・演劇等の入場料、職員研修の受講料又は施設の利用料等と認められるときは、その会費等は、資産の譲渡等の対価に該当する。

引用元:国税庁ホームページ

「安全協力費」、「安全活動費」に接待交際費が含まれているとき

消費税の処理はクリアしたとしても、「安全協力費」、「安全活動費」の中に接待交際費が含まれている可能性があります。

中小企業であれば2018年現在、接待交際費が800万円までは全額損金算入なので、多くの会社では、そんなに交際費が高額になるところはないでしょうから、特に心配する必要はありませんが、大企業や接待交際費が800万円を超える中小企業は注意が必要です。

しっかりした団体においては、接待交際費の割合を通知してくれたりします。

うやむやに経理処理せずに、しっかりと事実確認をして経理処理する必要がありますね。

消費税について、知っておきたい豆知識をまとめていますので、ぜひご覧ください。