有価証券の期末評価 財務会計論3(1)

有価証券の評価方法

原価法

原価法は、有価証券を取得原価で評価する方法で、その背景には有価証券を費用性資産ととらえる考え方があります。原価法で処理すると、有価証券を処分するまでは損益が確定しないので、未実現利益の計上を排除できるという利点があります。しかし、保有している間は、時価の変動があったとしても取得原価のまま貸借対照表に表示されるので、貸借対照表上の価額が時価と乖離(かいり)するといった問題が指摘されます。

時価法

時価法は、貸借対照表に計上する有価証券の価額を期末の時価で評価する方法です。その背景には、有価証券を貨幣性資産ととらえる考え方があります。この方法を採用すると、有価証券の評価額が時価となるため、企業の財政状態をより適正に貸借対照表に反映できるといった利点があります。しかし、有価証券を売却していないにもかかわらず、時価と取得原価との差額が利益として計上されてしまうことにため、その利益に資金的裏付けがないという批判があるのも事実です。

持分法

持分法は、株式発行会社の一株当たり純資産に保有株式数を乗じた価額で有価証券を評価する方法です。取得原価と持分法適用後の価額の差額は、期間損益に反映されます。大体は期末時点の貸借対照表を利用して評価するため、株式発行会社の一株当たり純資産を適時に把握できませんし、未実現利益が計上されるといった問題点があります。

償却原価法

償却原価法は、社債などの債券を債権額とは異なる価額で取得した場合に債権額と取得原価との差額を償還期間にわたり、毎期一定の方法で取得原価に加算あるいは減算する方法です。債権額と取得原価との差額は利息の調整と考えられ、その加算額は受取利息として期間損益計算に反映させます。ちなみに減算する場合は支払利息として処理します。

有価証券の評価の切り下げ

有価証券を原価法で評価する場合においても、時価が取得原価を下回った場合には、評価を切り下げて評価損を計上することもあります。

低価法

低価法は、時価と原価を比較し、時価が低い場合に有価証券の評価を切り下げて評価損を計上するやり方です。保守主義の原則が根底にあり、近い将来に有価証券を売却することを前提としている場合にできるだけ早く損失を計上することは、財務の健全性の点から好ましいと考えられます。ただし、近い将来に売却する予定のない長期保有の有価証券に低価法を適用するのは保守主義の原則から見ると妥当でないとされます。

強制評価減

有価証券の時価が原価と比較して著しく下落したとき、回復する可能性があると認められる場合を除き、貸借対照表に計上する有価証券の評価額は時価によって行います。この評価損は当期の損失として処理されます。また、時価がない有価証券については、発行会社の財政状態が悪化し、実質価額が著しく低下した時には相当の減額をします。その際の評価損は当期の費用として処理します。株式の実質価額は、株式発行会社の一株当たり純資産額を基礎として計算されます。

時価法を適用した場合の評価差額の処理方法

評価差額については、未実現利益を当期の利益に算入する方法と期間損益に反映させず貸借対照表の純資産の部に計上する方法があります。後者の方法では、未実現利益は当期の利益に影響を与えません。

「金融商品に関する会計基準」での評価方法

売買目的有価証券

期末の時価を貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益として計上します。

満期保有目的の債券

貸借対照表計上額は、取得原価としますが、債券金額と取得原価との差額が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて差額を取得価額に加算減算した価額を貸借対照表価額としなければなりません。

子会社株式及び関連会社株式

子会社株式及び関連会社株式は、取得原価を貸借対照表価額とします。

その他有価証券

上記の有価証券以外の有価証券(その他有価証券)のうち時価があるものは時価で、時価がないものは取得原価で評価します。評価差額は全額純資産の部に計上します。また、時価が取得原価を上回っているものだけを純資産の部に計上し、時価が取得原価を下回っているものについては当期の損失として処理する方法も認められています。

それから、売買目的有価証券は常に時価評価が行われるので問題とならないのですが、それ以外の有価証券については強制評価減の対象となり、時価が著しく下落した場合や実質価額が著しく低下した場合には評価損を計上しなければなりません。