相続税における未成年者控除の対象者と金額

相続税の申告において、相続又は遺贈によって財産を取得した者が未成年者であれば未成年者控除の制度が認められています。

今回は相続税の未成年者控除について解説します。

未成年者控除の適用は相続人に限定されてる

相続税法において未成年者控除は下記のように規定されています。

相続税法第19条の三

(未成年者控除)

相続又は遺贈により財産を取得した者(第一条の三第一項第三号又は第四号の規定に該当する者を除く。)が当該相続又は遺贈に係る被相続人の民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人)に該当し、かつ、二十歳未満の者である場合においては、その者については、第十五条から前条までの規定により算出した金額から十万円にその者が二十歳に達するまでの年数(当該年数が一年未満であるとき、又はこれに一年未満の端数があるときは、これを一年とする。)を乗じて算出した金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。
2 前項の規定により控除を受けることができる金額がその控除を受ける者について第十五条から前条までの規定により算出した金額を超える場合においては、その超える部分の金額は、政令で定めるところにより、その控除を受ける者の扶養義務者が同項の被相続人から相続又は遺贈により取得した財産の価額について第十五条から前条までの規定により算出した金額から控除し、その控除後の金額をもつて、当該扶養義務者の納付すべき相続税額とする。
3 第一項の規定に該当する者がその者又はその扶養義務者について既に前二項の規定による控除を受けたことがある者である場合においては、その者又はその扶養義務者がこれらの規定による控除を受けることができる金額は、既に控除を受けた金額の合計額が第一項の規定による控除を受けることができる金額(二回以上これらの規定による控除を受けた場合には、最初に相続又は遺贈により財産を取得した際に同項の規定による控除を受けることができる金額)に満たなかつた場合におけるその満たなかつた部分の金額の範囲内に限る。

未成年者控除の適用を受けられるのは法定相続人に限られています。

金額は、被相続人の死亡の日である相続開始日から20歳に達するまでの年数に10万円を乗じて計算します。

1年未満の期間があるときは1年に切り上げて計算します。

例えば、相続人が15歳3か月であったとすると未成年者控除を計算する年数は16年とし、10万円×16年=160万円 ということになります。

それから、未成年者である相続人が負担すべき相続税よりも未成年者控除額が少ない場合、控除しきれなかったものは、その者の扶養義務者の相続税から控除することが可能です。

配偶者と子、直系尊属と子が相続人になったケースなどで、配偶者や直系尊属が被相続人の子を扶養するのであれば未成年者控除の残額を相続税から控除することが可能です。

また、未成年者控除の残額の控除を受けられるのは相続人に限られず、相続又は遺贈によって財産を取得していれば適用できます。

未成年者が相続を放棄して財産を全く取得しなかった場合、未成年者控除の適用はありませんし、控除残額の扶養義務者からの控除も認められません。

ただし、相続放棄をした場合でも受取人指定されている死亡保険金は受け取ることが出来るので、相続税が発生する場合は未成年者控除の適用はできます。

相続放棄した場合でも死亡保険金を受け取れるのは、死亡保険金は受け取る人の固有の財産であり、相続税法においては本来の相続財産ではなく、相続税を計算するためのみなし財産として取り扱われます。

仮に、相続放棄した人が生命保険を受け取ったものの、相続放棄をしたので他の人に保険金を受け取って欲しいと主張したとします。

その場合は、保険金は受け取った人の固有の財産であり相続財産ではありませんので、保険金受取人からの贈与となり、贈与税がかかるので注意する必要があります。

最後に、相続人に未成年者がいる場合は、その未成年者に最低でも未成年者控除の金額以上の相続税がかかるように財産を取得させるのが、相続税の負担の軽減につながりますので、よく考えて財産分割したいものですね。