月の途中で亡くなった役員の給与はどうなる?

突然、元気だった人の訃報を聞くことがあります。

サラリーマンであれば、日割計算で最後の給料が計算されたりしますが、会社役員の給与も同じように計算されるのでしょうが?

それに、役員であれば法人税法上では定期同額給与の問題も生じます。

今回は、役員が亡くなった時の給与の取り扱いについて解説します。

役員は委任契約であり、給与の日割支給の概念はない

民法で委任契約の定めがあります。

民法第643条(委任)

委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

法律行為とはどういうことを指すかというと、会社においては会社運営のことを指します。

会社は、株主のものですが、その運営を委任されているのが役員というわけです。

委任契約は株主からの指揮・命令はありません。

参考までに、会社の従業員は雇用契約を会社と結んでいます。会社と雇用契約を結ぶと、会社(使用者)の指揮・命令に従って仕事をすることになります。

委任には、日割計算という概念はなく、報酬は通常、月額で決められます。

したがって、月の途中で亡くなった役員には、従事したのが例え一日だったとしても、最後の報酬は月額が支給されるのが一般的です。

支給期が到来していなければ死亡後の役員報酬は相続財産

所得税基本通達に給与所得の支給期の定めがあります。

所得税基本通達36-9

(給与所得の収入金額の収入すべき時期)

給与所得の収入金額の収入すべき時期は、それぞれ次に掲げる日によるものとする。(昭63直法6-1、直所3-1、平19課法9-1、課審4-11改正)

(1) 契約又は慣習その他株主総会の決議等により支給日が定められている給与等(次の(2)に掲げるものを除く。)についてはその支給日、その日が定められていないものについてはその支給を受けた日

(2) 役員に対する賞与のうち、株主総会の決議等によりその算定の基礎となる利益に関する指標の数値が確定し支給金額が定められるものその他利益を基礎として支給金額が定められるものについては、その決議等があった日。ただし、その決議等が支給する金額の総額だけを定めるにとどまり、各人ごとの具体的な支給金額を定めていない場合には、各人ごとの支給金額が具体的に定められた日

(3) 給与規程の改訂が既往にさかのぼって実施されたため既往の期間に対応して支払われる新旧給与の差額に相当する給与等で、その支給日が定められているものについてはその支給日、その日が定められていないものについてはその改訂の効力が生じた日

(4) いわゆる認定賞与とされる給与等で、その支給日があらかじめ定められているものについてはその支給日、その日が定められていないものについては現実にその支給を受けた日(その日が明らかでない場合には、その支給が行われたと認められる事業年度の終了の日)

また、相続税基本通達に下記の定めがあります。

相続税基本通達3-33

(支給期の到来していない給与)

相続開始の時において支給期の到来していない俸給、給料等は、法第3条第1項第2号に規定する退職手当金等には該当しないで、本来の相続財産に属するものであるから留意する。

つまり、支給期が到来していない役員報酬を遺族に支給した場合、給与とはならず相続税の課税対象となるわけです。

相続税の対象となるわけですので、当然に所得税の課税対象となりませんので、最後の報酬を支給するときは注意が必要です。

所得税基本通達9-17

(相続財産とされる死亡者の給与等、公的年金等及び退職手当等)

死亡した者に係る給与等、公的年金等及び退職手当等(法第30条第1項《退職所得》に規定する退職手当等をいう。)で、その死亡後に支給期の到来するもののうち相続税法の規定により相続税の課税価格計算の基礎に算入されるものについては、課税しないものとする。(昭63直所3-3、直法6-2、直資3-2、平元直所3-14、直法6-9、直資3-8改正)

(注) 上記の給与等、公的年金等及び退職手当等の支給期については、36-9、36-10及び36-14の(1)に定めるところによる。