一括償却資産や少額減価償却資産の減価償却累計額?

会計上で減価償却資産の処理について直接法を適用している場合、減価償却累計額を注記する費用があります。

建物や備品については売却や除却されない限り資産として認識されますが、少額減価償却資産や一括償却資産は即時償却あるいは3年均等償却されると簿価がゼロとなります。

これらの簿価がゼロになる資産の減価償却累計額も注記の記載に含めるべきなのでしょうか?

少額減価償却資産と一括償却資産

通常、減価償却資産は資産として処理した上で耐用年数に応じで減価償却しなければなりません。

ただし、すべての資産を管理することは大変ですので、10万円未満のものは消耗品等として経費処理することが認められています。

法人税法施行令 第133条

(少額の減価償却資産の取得価額の損金算入)

内国法人がその事業の用に供した減価償却資産(第四十八条第一項第六号及び第四十八条の二第一項第六号(減価償却資産の償却の方法)に掲げるものを除く。)で、前条第一号に規定する使用可能期間が一年未満であるもの又は取得価額(第五十四条第一項各号(減価償却資産の取得価額)の規定により計算した価額をいう。次条第一項において同じ。)が十万円未満であるものを有する場合において、その内国法人が当該資産の当該取得価額に相当する金額につきその事業の用に供した日の属する事業年度において損金経理をしたときは、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

所得税法施行令 第138条

(少額の減価償却資産の取得価額の必要経費算入)

第百三十八条 居住者が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供した減価償却資産(第百二十条第一項第六号及び第百二十条の二第一項第六号(減価償却資産の償却の方法)に掲げるものを除く。)で、第百八十一条第一号(資本的支出)に規定する使用可能期間が一年未満であるもの又は取得価額(第百二十六条第一項各号若しくは第二項(減価償却資産の取得価額)の規定により計算した価額をいう。次条第一項において同じ。)が十万円未満であるものについては、第四款(減価償却資産の償却)の規定にかかわらず、その取得価額に相当する金額を、その者のその業務の用に供した年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入する。

さらに、中小企業には「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」というものがあって、10万円以上30万円未満の減価償却資産の減価償却資産を即時経費処理することが認められています。

No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

No.2100 減価償却のあらまし

加えて、上記は中小企業事業者に対しての税制ですが、企業を問わず適用できるのが一括償却資産です。(法人税法施行令 第133条の2所得税法 第139条

少額減価償却資産と一括減価償却資産ともに名称の中に「償却資産」が入っているので、減価償却資産と考えがちです。

ただし、あくまで少額減価償却資産と一括減価償却資産は税務上のもので、会計上では消耗品等(場合によっては減価償却費として処理)として扱われます。

減価償却の直接法と間接法

減価償却には直接法と間接法があります。

直接法は減価償却費の分だけ直接簿価を減らす方法です。

建物の減価償却費が100万円だった場合、下記の仕訳となります。

減価償却費 100万円 / 建物 100万円

直接法に対して間接法は減価償却累計額を用います。

減価償却費 100万円 /減価償却累計額 100万円

間接法は減価償却累計額として貸借対照表に表示されますが、直接法を用いると減価償却累計額が貸借対照表に表示されないので、決算の注記に減価償却累計額を表記することになっています。

ここで問題となるのが、少額減価償却資産や一括償却資産を減価償却累計額として処理するのかどうかということです。

少額減価償却資産や一括償却資産は減価償却累計額に含めない

少額減価償却資産や一括償却資産は会計上では資産ではなく消耗品等として認識されます。

対して、税務上では少額減価償却資産や一括償却資産は資産として扱われます。

まあ、少額減価償却資産は取得したときにすぐ経費処理できるし残存簿価もゼロなので、何となく資産として認識されていない気もします。

ただし、一括償却資産は残存簿価はゼロですが3年均等償却するので償却が終わるまでは一括償却資産として貸借対照表に表示されます。その影響のせいで資産と勘違いされる可能性はあります。

減価償却累計額は会計上で資産とされるものに対して発生するものなので、会計上で資産とならないものはそもそも減価償却の対象ではありません。

ただし、便宜上減価償却費として処理しているだけで、本来であれば消耗品等すべきものなのかもしれません。

会計上と税務上の取り扱いの違いにより、減価償却累計額の扱いがあいまいになってしまっているようです。

他の見解もあるでしょうが、私の見解としては減価償却累計額に少額減価償却資産や一括償却資産に含めないのが妥当かと。