タワーマンション節税の落とし穴 過度な節税目的での購入にはご用心

最近、「タワーマンション節税」なるものがよく話に上がります。市場価格の高いタワーマンションは、実際の購入価格と財産評価通達による評価額との差が大きく、生まれた差額によって相続税額を低く抑えることができるのです。

マンションの評価額は、「敷地(敷地権)の価額」と「区分所有建物の価額」の合計額で計算されます。具体的に説明すると、敷地の価額は、路線価方式又は倍率方式によって評価を行い、区分所有建物の価額については、家屋の固定資産税評価額が基礎となります。

財産評価基本通達11 評価の方式
宅地の評価は、原則として、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げる方式によって行う。
(1)市街地的形態を形成する地域にある宅地 路線価方式
(2)(1)以外の宅地 倍率方式

財産評価基本通達89 家屋の評価
家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額(地方税法第381条《固定資産課税台帳の登録事項》の規定により家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録された基準年度の価格又は比準価格をいう。以下この章において同じ。)に別表1に定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する。

ただ、マンションは各部屋が一つの評価単位となるため、一棟の建物全体の評価額を専有面積の割合によって按分した額 が一部屋当たりの「敷地(敷地権)の価額」,「区分所有建物の価額」となります。したがって、一棟当たりの世帯数が多いタワーマンションなら、一部屋当たりの評価額が低くなる上、購入価格の高い高層階は、評価額との差が大きく開くこともあるのです。

財産評価基本通達2 共有財産
共有財産の持分の価額は、その財産の価額をその共有者の持分に応じてあん分した価額によって評価する。

財産評価基本通達3 区分所有財産
区分所有に係る財産の各部分の価額は、この通達の定めによって評価したその財産の価額を基とし、各部分の使用収益等の状況を勘案して計算した各部分に対応する価額によって評価する。

国税庁は2011年から13年の確定申告のデータを基に、全国343件の20階建て以上の高層マンションの実売価格を抽出。相続税の評価額と比較したところ、平均で約3倍、最大で約7倍の格差があったそうです。

国税庁では、タワーマンション節税について、一般的な方法による財産の評価では不適当と認められる場合に適用される「財産評価基本通達6項」を活用することで、適切な課税を行うとしています。この6項の適用により、取得価額で相続税の評価が行われた事例もあるようなので、節税目的でのタワーマンション購入は必ずしも節税につながるようではないようです。

財産評価基本通達6項 この通達の定めにより難い場合の評価
この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は,国税庁長官の指示を受けて評価する。

 

一般的に現預金を所有しているよりも不動産を所有している方が財産価値が下がるので相続税の節税にはもってこいだと言われます。節税できるから、と不動産業者がタワーマンションをすすめてきたら注意してください。