動画の制作費用は広告宣伝費として取り扱える?

新商品発表会で上映する商品PR動画など、企業が自社のオリジナル「動画」を制作することは、今や一般的に行われています。最近では、株主総会での事業報告を動画で行うケースも見られます。

税務上において、商品PR等を目的とした動画の制作費用は、広告宣伝費としての処理が認められるようです。

動画の制作費用は、耐用年数省令に掲げられている器具備品の「映画フィルム・磁気テープ・レコード(耐用年数2年)」に該当しそうですが、動画と映画フィルム等は、そもそも無形・有形という点で異なっており、動画の制作費用を器具備品として資産計上する必要はないでしょう。また、一般的な動画であればプログラミングも組み込まれていないため、「ソフトウエア」として5年間で均等償却することも不要です。

このような点を考慮すると、制作した動画の使用期間が1年以上に及ぶのであれば,「繰延資産」に該当するこも考えられます。

しかし、「繰延資産」に該当する費用は政令で限定列挙されており、動画の制作費用は,そのいずれにも該当しないことになります( 法法2 二十四, 法令14 ①)。

法人税法施行令第14条(繰延資産の範囲)

法第二条第二十四号(繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、法人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。

一 創立費(発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税その他法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきものをいう。)

二 開業費(法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。)

三 開発費(新たな技術若しくは新たな経営組織の採用、資源の開発又は市場の開拓のために特別に支出する費用をいう。)

四 株式交付費(株券等の印刷費、資本金の増加の登記についての登録免許税その他自己の株式(出資を含む。)の交付のために支出する費用をいう。)

五 社債等発行費(社債券等の印刷費その他債券(新株予約権を含む。)の発行のために支出する費用をいう。)

六 前各号に掲げるもののほか、次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもの

イ 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用

ロ 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用

ハ 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用

ニ 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用

ホ イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用

2 前項に規定する前払費用とは、法人が一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出する費用のうち、その支出する日の属する事業年度終了の日においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。

そのため、動画の制作費用は社歌やコマーシャルソング等の制作費用と同様に広告宣伝費として一括損金となることが一般的と考えられます( 法基通7-1-10 )。

法人税法基本通達7-1-10

(社歌、コマーシャルソング等)
社歌、コマーシャルソング等の制作のために要した費用の額は、その支出をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。