未払計上損金で自己否認すべきものがある

会社の決算を行う場合に未払債務として処理したものであっても、税務上では損金として認められないものがあります。

そのひとつに役員退職年金があります。

仮に株主総会で役員退職年金の総額が確定し、総額を未払金計上したとしても全額を損金算入できるわけではありません。

今回は未払計上損金で注意すべき点についてのお話です。

注意すべきは役員退職金や寄付金の未払計上

役員退職年金の総額を未払計上し分割支給する場合は、実際に支払ったときに損金算入されます。

したがって、一括で未払計上したとしても全額が損金算入されるわけではありません。

役員退職一時金であっても、長期にわたり分割支給する場合、年金と認定される可能性があるので、長くても3年以内に支給しなければ、支給があった時点での損金処理が必要になります。

次は寄付金の未払計上についてです。

支給金額が確定しているからといって寄付金を未払計上したとしても損金算入は認められません。

寄付金はあくまで支払いベースで計上しなければなりません。

法人税法第78条

(支出した寄附金の額)

法第三十七条第七項(寄附金の意義)に規定する寄附金の支出は、各事業年度の所得の金額の計算については、その支払がされるまでの間、なかつたものとする。

手形で支払った場合は決済されるまでは寄付金の支出は認められません。

法人税法基本通達9-4-2の4

(手形で支払った寄附金)

令第78条《支出した寄附金の額》に規定する「支払」とは、法人がその寄附金を現実に支払ったことをいうのであるから、当該寄附金の支払のための手形の振出し(裏書譲渡を含む。)は、現実の支払には該当しないことに留意する。

その他にも、定年延長などの規定改訂などに伴う退職金の打ち切り支給、保険料の未払計上、損害賠償金の年金払いなども、たとえ未払計上したとしても損金算入とならないので注意が必要です。

法人税法基本通達9-2-35

(退職給与の打切支給)

法人が、中小企業退職金共済制度又は確定拠出年金制度への移行、定年の延長等に伴い退職給与規程を制定又は改正し、使用人(定年延長の場合にあっては、旧定年に到達した使用人をいう。)に対して退職給与を打切支給した場合において、その支給をしたことにつき相当の理由があり、かつ、その後は既往の在職年数を加味しないこととしているときは、その支給した退職給与の額は、その支給した日の属する事業年度の損金の額に算入する。(昭49年直法2-71「14」、平16年課法2-14「九」、平19年課法2-3「二十二」により改正)

(注) この場合の打切支給には、法人が退職給与を打切支給したこととしてこれを未払金等に計上した場合は含まれない。