厚生年金保険法に基づいた遺族年金などの課税関係

会社員が死亡した場合、厚生年金保険法に基づいて遺族年金や死亡一時金が支給されます。

これらの給付は相続税法や所得税法においてどのように取り扱われるのでしょうか?

遺族年金や死亡一時金に相続税や所得税は非課税

遺族年金を受ける権利は相続人にあります。

相続税法において遺族年金を受ける権利は「契約に基づかない定期金に関する権利」として相続財産とみなされます。

相続税法第3条第1項六

被相続人の死亡により相続人その他の者が定期金(これに係る一時金を含む。)に関する権利で契約に基づくもの以外のもの(恩給法(大正十二年法律第四十八号)の規定による扶助料に関する権利を除く。)を取得した場合においては、当該定期金に関する権利を取得した者について、当該定期金に関する権利(第二号に掲げる給与に該当するものを除く。)

しかし、厚生年金保険法において遺族年金は非課税とされており、相続税は課税されません。

厚生年金保険法第41条第2項

租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢厚生年金については、この限りでない。

相続税法基本通達3-46

法第3条第1項第6号に規定する「定期金に関する権利で契約に基づくもの以外のもの」には、3―29の定めに該当する退職年金の継続受取人が取得する当該年金の受給に関する権利のほか、船員保険法の規定による遺族年金、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)の規定による遺族年金等があるのであるが、これらの法律による遺族年金等については、それぞれそれらの法律に非課税規定が設けられているので、相続税は課税されないことに留意する。

また、企業によっては厚生年金基金を設立していて、従業員が死亡した場合には死亡一時金を支給するところもありますが、この死亡一時金も同様に相続税は非課税となっています。

厚生年金保険法第41条第2項により遺族年金と死亡一時金には所得税は課税されません。

所得税法基本通達9-2

(非課税とされる年金の範囲)

法第9条第1項第3号ロに掲げる年金には、次に掲げるものが含まれる。(昭63直法6-1、直所3-1改正)

(1) 死亡した者の勤務に基づき、使用者であった者から当該死亡した者の遺族に支給される年金

(2) 死亡した者がその勤務に直接関連して加入した社会保険又は共済に関する制度、退職年金制度等に基づき、当該死亡した者の遺族に支給される年金で、当該死亡した者が生存中に支給を受けたとすれば法第35条第3項《雑所得》の規定によりその者の公的年金等とされるもの

遺族年金と死亡一時金は、残された遺族の生活を確保するために支給されるものなので、それに課税してしまっては制度自体が疑われますよね。