従業員への健康診断は消費税の課税仕入 配偶者の健康診断は?

会社の従業員に対して実施する健康診断は、条件を満たした場合は福利厚生費として処理することができます。

また、健康診断は自由診療にあたるので、消費税の課税仕入となります。

それでは、福利厚生の一環として、従業員の配偶者の健康診断費用を会社が負担した場合、福利厚生費として、しかも、消費税の課税仕入として処理することが出来るのでしょうか?

健康診断費用は条件を満たせば福利厚生費

従業員の健康診断について、労働安全衛生規則第43・44条において、その実施が義務付けられています。

それから、健康診断は、一部の従業員だけに限定している場合を除き、給与として課税しなくてよい取り扱いとなっています。

所得税基本通達36-29

(課税しない経済的利益……用役の提供等)

使用者が役員若しくは使用人に対し自己の営む事業に属する用役を無償若しくは通常の対価の額に満たない対価で提供し、又は役員若しくは使用人の福利厚生のための施設の運営費等を負担することにより、当該用役の提供を受け又は当該施設を利用した役員又は使用人が受ける経済的利益については、当該経済的利益の額が著しく多額であると認められる場合又は役員だけを対象として供与される場合を除き、課税しなくて差し支えない。

また、人間ドックについては、高額なもの以外の一般的に実施されているものは、給与として課税しなくてよいとされています。

人間ドックの費用負担

したがって、健康診断費用は給与として処理するのではなく、福利厚生費として処理するわけです。

健康診断費用は消費税の課税仕入

消費税法において、社会保険が適用される診察や治療は非課税取引とされています。

消費税法第6条

(非課税)

国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない。

別表第一(第六条、第十二条の二、第十二条の三関係)

六 次に掲げる療養若しくは医療又はこれらに類するものとしての資産の譲渡等(これらのうち特別の病室の提供その他の財務大臣の定めるものにあつては、財務大臣の定める金額に相当する部分に限る。)

イ 健康保険法(大正十一年法律第七十号)、国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)(防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和二十七年法律第二百六十六号)第二十二条第一項(療養等)においてその例によるものとされる場合を含む。)、地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)又は私立学校教職員共済法(昭和二十八年法律第二百四十五号)の規定に基づく療養の給付及び入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、家族療養費又は特別療養費の支給に係る療養並びに訪問看護療養費又は家族訪問看護療養費の支給に係る指定訪問看護

ロ 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)の規定に基づく療養の給付及び入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費又は特別療養費の支給に係る療養並びに訪問看護療養費の支給に係る指定訪問看護

ハ 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)の規定に基づく医療、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)の規定に基づく医療扶助のための医療の給付及び医療扶助のための金銭給付に係る医療、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七号)の規定に基づく医療の給付及び医療費又は一般疾病医療費の支給に係る医療並びに障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)の規定に基づく自立支援医療費、療養介護医療費又は基準該当療養介護医療費の支給に係る医療

ニ 公害健康被害の補償等に関する法律(昭和四十八年法律第百十一号)の規定に基づく療養の給付及び療養費の支給に係る療養

ホ 労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)の規定に基づく療養の給付及び療養の費用の支給に係る療養並びに同法の規定による社会復帰促進等事業として行われる医療の措置及び医療に要する費用の支給に係る医療

ヘ 自動車損害賠償保障法(昭和三十年法律第九十七号)の規定による損害賠償額の支払(同法第七十二条第一項(定義)の規定による損害をてん補するための支払を含む。)を受けるべき被害者に対する当該支払に係る療養

ト イからヘまでに掲げる療養又は医療に類するものとして政令で定めるもの

ただし、自由診療については、社会保険が適用されず、消費税の非課税とはなりません。

健康診断は自由診療に該当するので、消費税が課税されるわけです。

従業員の健康診断費用は、課税仕入の福利厚生費で処理します。

従業員の配偶者の健康診断費用は金銭を支給したものとみなす

あまり見かけませんが、会社によっては従業員の配偶者の健康診断費用を負担するケースもあります。

福利厚生費は、従業員本人に対するものを対象としており、基本的にその家族に対する者は対象となりません。

従業員すべてが結婚しているわけでもなく、配偶者の健康診断費用の負担は、限定的となり、全従業員を対象としているわけではありません。

したがって、その費用は現物給与として、給与課税されます。

消費税はというと、従業員が支払うべき健康診断費用を、会社が立替払いしたものと考え、消費税を含めた総額を給与として支給したと考えます。

まとめると、従業員の配偶者に対する健康診断費用は、給与として処理し、消費税は考慮しないという結論に至るわけです。