法人税法や所得税法における棚卸資産の範囲
会社の決算を迎えるにあたり避けては通れないのが商品等の棚卸しです。
小売店では店舗や倉庫の在庫、製造業であれば材料や製品の在庫確認が必要です。
また、会社の管理部門では、切手や事務用品などの貯蔵品の在庫も確認したりします。
ところで、法人税法や所得税法において棚卸資産とはどういうものを指すのでしょうか?
販売用の商品・製品、製造途中の仕掛品や生産中の農作物なども棚卸資産
企業会計の会計処理については、企業会計基準第 9 号「棚卸資産の評価に関する会計基準」において、棚卸資産は下記のように定義されています。
棚卸資産の評価に関する会計基準 3
範 囲
本会計基準は、すべての企業における棚卸資産の評価方法、評価基準及び開示について
適用する。棚卸資産は、商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等の資産であり、企業がそ
の営業目的を達成するために所有し、かつ、売却を予定する資産のほか、売却を予定しな
い資産であっても、販売活動及び一般管理活動において短期間に消費される事務用消耗品
等も含まれる。なお、売却には、通常の販売のほか、活発な市場が存在することを前提として、棚卸資
産の保有者が単に市場価格の変動により利益を得ることを目的とするトレーディングを含
む。
法人税法や所得税法において、棚卸資産については下記のように記載されています。
法人税法施行令 第10条
(棚卸資産の範囲)
法第二条第二十号(棚卸資産の意義)に規定する政令で定める資産は、次に掲げる資産とする。
一 商品又は製品(副産物及び作業くずを含む。)
二 半製品
三 仕掛品(半成工事を含む。)
四 主要原材料
五 補助原材料
六 消耗品で貯蔵中のもの
七 前各号に掲げる資産に準ずるもの
所得税法施行令第3条
(棚卸資産の範囲)
法第二条第一項第十六号(棚卸資産の意義)に規定する政令で定める資産は、次に掲げる資産とする。
一 商品又は製品(副産物及び作業くずを含む。)
二 半製品
三 仕掛品(半成工事を含む。)
四 主要原材料
五 補助原材料
六 消耗品で貯蔵中のもの
七 前各号に掲げる資産に準ずるもの
さらに、所得税法施行令第3条第7号に定める「前各号に掲げる資産に準ずるもの」とは所得税法基本通達に規定されています。
所得税法基本通達 2-13
(棚卸資産に含まれるもの)
令第3条第7号《棚卸資産の範囲》に掲げる「前各号に掲げる資産に準ずるもの」には、例えば、事業所得を生ずべき事業に係る次に掲げるような資産で一般に販売(家事消費を含む。)の目的で保有されるものが含まれる。(平23課個2-33、課法9-9、課審4-46改正)
(1) 飼育又は養殖中の牛、馬、豚、家きん、魚介類等の動物
(2) 定植前の苗木
(3) 育成中の観賞用の植物
(4) まだ収穫しない水陸稲、麦、野菜等の立毛及び果実
(5) 養殖中ののり、わかめ等の水産植物でまだ採取されないもの
(6) 仕入れ等に伴って取得した空き缶、空き箱、空き瓶等
販売用に購入した商品や製品はもちろんのこと、製造中でまだ完成していない製品、生産中の農作物、養殖中の魚介類、飼育している牛や豚などが棚卸資産に該当します。
金額が大きいものとして、建設業における未完成の工事に対して支出した工事原価、農業における生産中の農作物があります。
建設業の仕掛品を計算するとしたら、かなり複雑になるかもしれませんが、税務調査の際に指摘されたりすると納税額が多額になる可能性がありますので、計算方法を確立し、毎期、所得の計算に反映させる必要があります。
費用は発生主義に基づいて計上し、さらに費用収益の対応関係をしっかりして正しい損益の計算を心掛けましょう。